“五輪招致失敗しても神宮再開発は進める”との都幹部説明に、森喜朗「すばらしい。あと15年は長生きしないと」
そして、この萩生田氏が迫っていた問題に対し、都側は同年5月15日、森氏に直接説明をおこなっている。当時の佐藤広・東京都副知事と安井技監は森氏と面談をおこない、このとき佐藤副知事らは神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えた上で建て直すという、現在まさに進められている再開発案につながるプランを提示したのだ。
すると、森氏は「すばらしい案じゃないか。長生きしないと」と大喜び。さらに安井技監が“五輪の招致が失敗しても神宮外苑全体の再整備を前提に都市計画変更の調整を進める”と明言すると、森氏は「すばらしいよ。あと15年は長生きしないと」と口にしたのだ。ようするに、森氏は東京五輪の実現・成功などよりも、五輪にかこつけた神宮外苑の再開発のほうが重要だったのである。
こうして森氏のゴーサインのもとでスタートした神宮外苑の再開発案は、その後、超高層ビルや商業施設が計画に加えられるかたちで進行。樹木の大量伐採に反対の声があがっているにもかかわらず、三井不動産や明治神宮などの事業体によって着々と進められている。また、秩父宮ラグビー場の整備・運営主体も、鹿島や三井不動産などで構成される事業体が落札している。
神宮外苑の再開発計画の中止・見直しを求め、情報開示を通じて問題を提起してきた日本共産党都議団は、今年4月におこなった会見において、森氏の関与に言及。このようにまとめている。
〈情報開示を通じて、神宮外苑再開発計画がスポーツ拠点整備とは名ばかりで、東京都が主導し、森元首相が一貫して深く関与して、開発事業者の三井不動産や土地所有者の明治神宮に利益をもたらす方向に変更されてきたこと、その結果として、樹木の伐採、歴史的景観の破壊をはじめ大きな矛盾に直面していることが、明らかになりました。〉
五輪招致買収に再開発利権……このように表舞台のみならず裏でも暗躍してきた森氏。AOKIをめぐる収賄疑惑だけではなく、これら東京五輪の闇にもメスが入れられなければならないだろう。
(編集部)
最終更新:2022.09.02 06:06