安倍政権下では実質賃金もGDP成長率も散々だったのに「アベノミクスを変えるな」
だが、これ以上にネット上でツッコミが炸裂したのは、26日放送『NIKKEI 日曜サロン』(BSテレ東)での発言だ。同番組において安倍元首相は、岸田政権が掲げる「分配」強化の経済政策について、「社会主義的になっていくのではないかと捉えられると、市場もマイナスに反応する」などと妄想としか思えないようないちゃもんをつけたうえで、こう説教したのだ。
「根本的な方向をアベノミクスから変えるべきではない。市場もそれを期待している」
たしかにツッコミどころが満載すぎだが、なかでも呆れるのは、安倍がこの期に及んでまだ「アベノミクスを変えるな」などと言い募っていることだろう。
改めて断言しておくが、アベノミクスで日本経済がよくなったなんてことは、客観的な事実としてまったくない。
たしかに株価は上がり、円安で輸出企業など一部の大企業は儲かったが、結局、富裕層の金融資産と企業が溜め込む内部留保が急増しただけ。アベノミクスの約8年間で、労働者の賃金はまったく上がらなかった。
それは、労働者の平均賃金から物価の影響を差し引いた「実質賃金」の増減を見れば明らかだ。厚労省の発表では2013年がマイナス0.7%、2014年がマイナス2.8%、2015年がマイナス0.8%、2016年がプラス0.8%、2017年がマイナス0.2%、2018 年がプラス0.2%、2019年がマイナス1.0%。第2次安倍政権のうち、コロナの影響があった2020年を除く2019年までの7年間で賃金が上昇したのは、2016 年と2018年だけ。あとは全部マイナスで、差し引きすると5%近くも減っているのだ。
しかも、2018年のプラスは、厚労省がこっそり統計手法を変更して数値をかさ上げしたアベノミクス偽装だったことが判明。以前の統計手法だと、マイナスになっていたことがわかっている。
ちなみに、民主党政権下では、2010年の実質賃金がプラス1.3%、2011年はプラス0.1%、2012年がマイナス0.9%で、トータルで0.3%プラス。統計偽装をそのまま修正しなくても「悪夢の民主党政権」よりもはるかにひどい数字ということになる。
アベノミクス下での日本の賃金の低さは、国際比較でも明らかだ。OECD(経済協力開発機構)が購買力平価ベースの各国の平均賃金を定期的に調査しているが、各国がこの10年で軒並み賃金を上昇させているのに、日本だけが横ばい。その結果、2015年には韓国にも抜かれ、2020年にはOECD35カ国中22位にまで落ち込んでいる。