安倍の意向を受けて加計学園の獣医学部新設でも暗躍、前川喜平氏の口封じまで
しかも、和泉首相補佐官は前川氏に圧力をかけただけではなかった。NHKがスクープした「10/21萩生田副長官ご発言概要」という文書では、〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた〉という決定的な文言のほか、こうも記されていたからだ。
〈内閣府や和泉総理補佐官と話した。(和泉補佐官が)農水省とも話し、(中略)畜産やペットの獣医師養成とは差別化できると判断した。〉
〈和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、文科省だけが怖じ気づいている、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている。〉
なんと和泉首相補佐官は農水省にまで直接手を回し、萩生田光一官房副長官(当時)まで動かしていたのだ。このあと、萩生田官房副長官は獣医学部新設の条件に「広域的に」「限り」という文言を追加するよう指示。これにより獣医学部新設に名乗りを上げていた京都産業大学が事実上、振り落とされてしまった。
ようするに、和泉首相補佐官はまさに安倍首相の代わりとなって加計学園の獣医学部新設を実現させた、最大のキーマンともいえる人物なのだ。
実際、2017年6月に日本記者クラブ主催の記者会見に出席した前川氏は、「全体のシナリオを描いていた」人物として、和泉首相補佐官の名を挙げた。
「私の目から見ますと、和泉総理補佐官がいちばんのキーパーソンではないかと」
「10月21日付けの萩生田副長官のご発言の内容を見ても、萩生田さんは和泉さんと話をした結果として、それを文科省に伝えている。やはり情報発信源になっているのは和泉さんではないか。和泉補佐官がいちばん全体のシナリオを描いて、全体の統括もしている、そういう立場にいらっしゃったのではないかと思っています」
だが、和泉首相補佐官は加計学園の獣医学部新設を実現させるべく「全体の統括」をしただけではなかった。あの“読売新聞を使った前川氏の告発潰し”でも、和泉首相補佐官は暗躍していたのである。
2017年5月、「総理のご意向」文書が飛び出た際に前川氏の実名告発の動きがあるなかで、読売新聞は同月22日付で「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」と報道。本サイトでも繰り返し伝えてきたが、これは官邸が、前川氏の告発を潰す目的で読売にリークして書かせたものだ。そして、読売に記事が出る前日、前川氏に揺さぶりをかけたのは和泉首相補佐官だった。前川氏はこう証言している。
「21日に和泉補佐官からのアプローチもあった。文科省の藤原誠初等中等教育局長からのショートメールだった。(自分の携帯から着信記録を示して)これです。『和泉さんから話を聞きたいと言われたら、対応される意向はありますか?』。それに対しては、『ちょっと考えさせて』と返信した」
「和泉さんが私の口を封じたかったのではないか、と思っている。ちょうど私が加計関係の文科省内部文書について、メディアの取材を受け始めた時だ。前川がしゃべっているとの情報が伝わったのではないか」(「サンデー毎日」2017年12月10日号/毎日新聞出版)