不正発覚時も、吉村知事は評論家のような他人事コメント、松井市長は「知らんわ」
これらを総合すると、リコール運動に、維新が深く関与していたことは明らかなのだ。しかし、呆れるのは、党の副代表の吉村知事、そして代表である松井一郎大阪市長の無責任な態度だ。
いまさらいうまでもないが、リコールは、選挙で選ばれた公職者の解任を直接請求するという、民主主義において選挙に匹敵する価値のある制度である。
そして、繰り返すが、田中事務局長は日本維新の会の愛知5区支部長であり、次期衆院選公認候補だった。そんな人間が、戦後政治史上に大きな汚点を残す一大スキャンダルに中核として関わっていたとなれば、党、そして自らもリコール運動を支援していた党の副代表の吉村知事、そして代表である松井一郎大阪市長も当然、この深刻な不祥事について積極的に調査し、説明し、謝罪する必要がある。
ところが、吉村知事も松井市長も、当初の運動へのシンパシーはどこへやら、まるで他人事のような姿勢を決め込んできた。
吉村知事は選管が大量の不正疑惑を発表した直後の2月3日の会見で、「誰が、どのくらい、どういうふうな不正をしたのか徹底的な真実解明がされるべき。まじめな思いを持って署名された方もいる。リコールというのは民主的な手続きですから、不正については徹底的に真実解明されるべき」と評論家のようなコメント。
また、松井市長は、バイト動員が発覚した2月16日の会見で、田中事務局長を処分するのかと問われ、こう答えた。
「それは本当に違法なことをやったというならそれはすぐ処分しますよ、もう辞めてもらいますよ、そんなの。民主主義の根幹であるリコールのルール破りなんてしているんだから。ただ、そのことについて僕に報告とか、なんなら今僕のところにそういう連絡もありません。知らんわ、リコールの事務局やってたっていうことすらも」
松井市長はいったい何をとぼけているのか。維新が田中事務局長を衆院候補として公認したのは、2020年7月29日、まさにリコール運動真っ最中のこと。あれだけ大きなニュースになり、自分たちも支援していたリコール運動で、自身の政党の公認候補が中心的役割を担っていることを知らないはずがないだろう。
というか、維新は田中氏がリコール運動の事務局長を務めていることを込みで、田中氏を公認し、その田中氏の活動を支援していたのではないのか。
実際、維新が選挙活動に使っていた車と同一ナンバーの車が、リコール運動の街宣活動に使用されていたという情報もある。ようするに、維新は組織としてこのリコール運動をバックアップし、リコール運動を選挙活動に利用しようとしていた可能性もあるのだ。それを「知らんわ」の一言で済ますとは……。