「お金の出入りは一切ない」「主催は安倍後援会だが、契約の主体は参加者個人」…あり得ない主張の数々
そもそも、安倍前首相が嘘を言っているような“怪しさ”は、国会ではじめて「前夜祭」問題をぶつけられたときから漂っていた。「前夜祭」の追及が最初におこなわれたのは昨年11月8日、参院予算委員会での日本共産党・田村智子議員の質疑だったが、このとき田村議員が「『桜を見る会前夜祭』と翌日の『桜を見る会』がセットになって、山口県のみなさんと親しく懇親をする。そういう場になっているんじゃないですか」と質問すると、安倍首相はなぜか訊かれてもいないのに「各個人がですね、それぞれの費用によって、この、上京し、そして、この、ホテルとの関係においても、それはホテルに直接払い込みをしているというふうに承知をしているところでございます」と言い出したのだ。
このときの安倍前首相のおどおどした態度を見ても、すでにこの時点で安倍事務所のみならず安倍前首相自身も「前夜祭」の違法性について認識していたのではないかと勘ぐらずにいられないが、この田村議員の追及がテレビでも大きく報じられるようになると、同月15日、安倍前首相は約20分間にもおよぶ異例のぶら下がり取材に応じた。
しかし、このときの安倍前首相の態度も酷いものだった。安倍前首相は「事務所からですね、詳細について、きょう報告を受けました」と前置きした上で、「参加者1人5000円という会費については、まさに、大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、ホテル側が設定した価格であるとの報告を受けております」だの「夕食会費用については、会場の入り口の受付にて、安倍事務所職員が1人5000円を集金をし、ホテル名義の領収書をその場で手交し、受付終了後に、集金したすべての現金をその場でホテル側に渡すというかたちで、参加者からホテル側への支払いがなされたということでございます」だのと嘘を吐きまくったのだが、酷かったのは記者への態度だ。
このぶら下がり取材自体、開始の約10分前に不意打でセットされたもので記者たちに準備時間を与えない姑息なものだったのだが、安倍前首相は無理がありすぎる主張を一方的に展開したあとは、記者から質問が飛んでも「いまお話ししたとおりで……最初、聞いておられました?」「つまり、お金の出入りはですね、一切ないわけですから」「(会計は)まったく問題ない」「私、もう出なければなりませんので、同じような質問はちょっと避けていただきたい」とまくし立てるばかり。しかも、記者から後日に記者会見を開く予定はあるのかと尋ねられると、「あらためて会見するというのであれば、いま質問してください」と迫ったのだ。
だが、2019年から年をまたぐと、安倍前首相の人を食ったような態度と嘘にはさらに磨きがかかってゆく。
たとえば、1月31日の衆院予算委員会では総務省選挙部長が「記載すべき収支の判断基準は当該団体の収支かどうかということ」「収支の結果ゼロになるかどうかは関係ない」と答弁し、現金をそっくりそのまま渡してプラスマイナスゼロになったかどうかは関係ない、という見解を示した。すると安倍前首相は、今度は「主催は安倍後援会だが、契約の主体はそれぞれ個人が支払いをおこなっている」「ホテルとの契約主体は参加者個人になる」と言い出した。
今回証拠が出てきたことで「契約の主体は参加者個人」というのが大嘘だったことがはっきりしたわけだが、この安倍前首相の主張は、公選法で禁じられている地元有権者への接待による買収を政治資金収支報告書に記載せず「会場側と参加者の契約だ」と言い張れば法をすり抜けられてしまうことになるもの。つまり、嘘をついていただけではなく、脱法を正当化しはじめたのだ。