「コロナなのに学術会議をやっている場合じゃない」というすり替えに騙されるな
この『安倍三代』にはほかにも、ジョン・ロックの研究などで知られる加藤節名誉教授など安倍首相の成蹊大学時代の教師が複数登場し、安倍首相を批判している。だが、そのなかでも重昭氏の言葉はとりわけ真に迫っており、かつての師として自分の教え子が日本を危機に陥れようとしていうることに黙っていられないという切実な思いがひしひしと伝わってくるものだった。
しかし、安倍首相には、重昭氏の真摯な思いは全く届かなかったようだ。2016年、「AERA」に重昭氏の批判が掲載された直後には官邸周辺から「安倍首相が宇野氏に赤っ恥をかかされて激怒している」「宇野だけは許さない、と周りに漏らしていた」との情報も流れていた。
そして、その翌々年、その宇野重昭氏の実子である宇野重規氏が日本学術会議に推薦されると、安倍首相は前例をくつがえして任命を拒否したのである。オトモダチばかりを引き立て、少しでも自分への批判を口にしたものは「裏切り者」として排除してきた安倍首相の性格を考えると、きっかけは父親から批判を受けたことへの意趣返しという意味合いがあった可能性は十分考えられる。
これまでなんども指摘してきたように、政権を批判したことを理由に政府の学術機関の任命を拒否するというのは、憲法で保障された「学問の自由」を侵害するありえない行為だ。加えて、安倍首相が私怨で任命拒否したとすれば、そのやり口は独裁政権そのものというしかない。
しかも、安倍首相の宇野教授に対する任命拒否が問題なのは、その前例を破った憲法違反が政権内で既成事実となり、菅政権に引き継がれて、さらに規模が拡大されてしまったことだ。
このまま任命拒否問題を許してしまったら、それこそ日本は民主主義国家ではなくなってしまうだろう。
政権応援団や御用メディアはコロナの感染再拡大でこれ幸いとばかりに「メディアも野党も日本学術会議問題を追及している場合じゃない」などと言い出しているが、そんなすり替えに騙されてはならない。
(編集部)
最終更新:2020.11.24 11:06