公設第1秘書や地元支援者だけではなく、安倍前首相にも事情聴取の動き
今回の疑惑をあらためておさらいをしておこう。周知のとおり、安倍前首相は2013年から「桜を見る会」の開催と合わせて地元支援者らを招待した「前夜祭」を開き、2013、14、16年はANAインターコンチネンタル東京で、2015、17、18、19年はホテルニューオータニで開催してきた。
しかし、安倍晋三後援会の政治資金収支報告書では、「前夜祭」を開催してきた2013年から2019年の6年間のあいだ、1度も「前夜祭」の収入・支出についての記載がない。参加者から受け取ったという1人5000円の「収入」も、ホテル側に宴会代として支払われた「支出」も記載されていないのだ。これについて安倍前首相は「主催は後援会で契約の主体は参加者個人」などという噴飯モノの答弁を繰り返してきた。
これが政治資金規正法25条などに定められた記載義務違反に当たるのは明白だが、さらに、この「前夜祭」には公選法違反疑惑がもちあがっていた。
というのも、ニューオータニでは立食パーティのプランは「1人1万1000円から」となっており、会費5000円の立食パーティを実施すること自体が一般的には不可能。安倍前首相側が最低でも1人あたり6000円の差額を補填していたとしか考えられなかったからだ。
もし安倍前首相側が費用を補填し、酒食を無償で提供したとしたら、「寄附」に該当し、公職選挙法に規定されている公職選挙法199条の2の1項(公職の候補者の寄附の禁止)もしくは199条の5の1項(後援団体による選挙区民への寄附の禁止)に違反したことになる。
しかし、安倍前首相はこの「寄附」を否定するために、「大多数が当該ホテルの宿泊者であるという事情等を踏まえ、ホテル側が設定した価格」などと無理やりホテル側に責任を転嫁する見え透いた嘘の説明を繰り返してきた。
だが、上述したように、今回、ホテル側が作成した領収書や明細書に、安倍前首相側が費用を補填していたことを示す記録が残っており、それを東京地検特捜部が押さえていることがわかったのだ。
しかも、NHKの報道どおり、その補填金額、つまり寄附行為の金額が5年間で少なくとも800万円以上にのぼるとすれば、かなり大胆かつ悪質なものだ。
これは、普通に考えれば、公選法違反で立件できる要件が完全に揃った真っ黒な疑惑と言っていいだろう。実際、検察側はかなり本腰を入れており、日本テレビの報道によると、すでに東京地検特捜部は公設秘書のみならず、地元支援者にも任意の事情聴取をおこなっており、その数は20人以上にものぼるという。さらに毎日新聞が夕方に配信した記事によると、〈特捜部は立件の可否を判断するため、前首相への事情聴取も検討している模様〉だというのだ。