デマを煽った『ミヤネ屋』の罪 『ひるおび!』は吉村知事を生出演させ「希望が持てる」
しかし、情けないのは国内メディアだ。ネットでは吉村知事の会見直後から発表に疑義が呈され、批判の声が圧倒的だったが、当日のワイドショーは会見を垂れ流し。「“コロナ”治療 効果が期待」とテロップで煽った『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)は論外としても、ほかの番組も「まだ実証はされていない」とエクスキューズをつけるのがせいぜいで、研究結果などと到底呼べない段階での杜撰な発表で、大混乱を引き起こしていることの責任を追及することはほとんどなかった。
6日放送の『ひるおび!』は、すでにデタラメが明らかになっているのに、吉村知事をリモート生出演させ、「希望が持てる」「素晴らしい方向性」などと褒めそやしていた。
ワイドショーだけではない。会見翌日5日の読売新聞「編集手帳」では、吉村知事を〈頼もしい〉と持ち上げた上で、問題のイソジン会見についても〈もちろん大規模な研究で効果を確かめる必要はあるが、時を争う現状の危機を踏まえての呼びかけだろう〉〈吉村亭の品書きに一つ、新メニューが加わった〉などと評価したのだ。
「トイレットペーパー品薄デマを拡散」などと言って一般人の投稿は晒しあげ、職場で処分されるまでに追い込んでおきながら、首長という責任重大な立場にある者の、デタラメ言動には「間違っている」と明確に指摘することもその混乱の責任を追及することもできないメディア……。
こんなことは、民主主義先進国ではあり得ないことだ。たとえば、4月にアメリカのトランプ大統領がコロナの治療法として「消毒液注射」や「体内への太陽光照射」など医学的根拠ないことを発言した際には、メディアは一斉に事実ではないと明確に否定した上で、批判。つい先日も、Facebookがトランプ大統領の「子どもはコロナにほぼ免疫がある」という趣旨の投稿を、偽情報が含まれているとして削除するということがあった。
日本のメディアは、普段から、為政者の一方的な発表や言い分を「事実」のように報じる悪癖があるが、命や健康に関わる問題で医師や専門家から明確な間違いを指摘されても、いつもの両論併記的な扱いをする。
アメリカの国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、長年のHIV研究の経験からワクチンに過度な期待をするべきではないと早くから警鐘を鳴らしている。目の前の検査体制や医療体制を支援・整備することをせず、「ワクチン」や「治療薬」に飛びつくというのは、まさに維新らしい反知性主義のあらわれだ。
会見直後の記事では、ようやく吉村知事の化けの皮も剥がれてきたとお伝えしたが、日本メディアはまだ騙されたままのようだ。維新と維新をもてはやすメディアを放置していたら、冗談でなくわたしたちの命が脅かされる事態になりかねない。
(編集部)
最終更新:2020.08.07 02:54