上・首相官邸HPより、下・RIETI(独立行政法人経済産業研究所)HPより
新型コロナの感染拡大が止まらない。きのう6日も東京都で新たに102人の感染が確認され、国内全体でも7月3〜5日と3日連続で新規感染者数が200人を超えた。政府が緊急事態宣言解除の目安としたのは「直近1週間の新規感染者数が10万人当たり0.5人程度以下」という数値だったが、6月28日〜7月4日の数字では、東京都(4.31人)はもちろんのこと、埼玉県(1.59人)や神奈川県(1.2人)、千葉県(0.91人)のほか、クラスターが発生した鹿児島県(2.5人)など、その目安を超える状態となっている。
しかし、こうした状況を安倍政権は直視しない。むしろ、廃止に追い込んだ専門家会議に代わる分科会が昨日、初会合をおこなったが、その後の記者会見で西村康稔・コロナ担当相は、イベント開催の規制緩和について「(分科会で)了解をいただいた」と明言。これにより、10日からはプロスポーツなどで無観客から施設定員の50%の範囲内で5000人まで認められることになる。
対策を講じるべき局面なのは明白なのに、逆に緩和する──。いや、そればかりか、1日に「Go Toキャンペーン」のイベントと商店街事業を担う経産省は委託先の公募を開始すると同時に、キャンペーンの8月中の開始を目指すと公表したのだ。
そもそも「Go Toキャンペーン」は、感染拡大の一途を辿っていた4月初旬に政府が第一次補正予算案で〈感染症流⾏が収束した後、国内における⼈の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化するため〉として1兆6794億円も計上。当時から「収束後のことではなく感染拡大防止策のほうが先」「観光業やイベント関連などにいま必要なのは未来の需要喚起ではなく補償」などという声があがっていた。
そして、現在の新規感染者数の伸び方、とりわけ東京都の感染者数の増加を考えれば、人の移動を促すことにもなる「Go Toキャンペーン」を来月中に実施しようというのは、はっきり言って正気の沙汰ではない。しかし、今回イベント開催の規制を10日に緩和することにしたのも、この「Go Toキャンペーン」を予定通り実施するための布石だといわれているのだ。
どれだけ非難を浴びようと、さらには感染拡大の局面にあっても、どうして安倍政権はここまで「Go Toキャンペーン」に固執するのか──。その理由は、「Go Toキャンペーン」が「影の総理」と呼ばれる安倍首相の最側近・今井尚哉首相補佐官と、その子飼いである新原浩朗・経産省経済産業政策局長の肝いりだからだ。
新原氏といえば、昨年11月、タレントの菊池桃子と入籍した経産省のエリート官僚で、「将来の事務次官」と囁かれる人物。そして、今井首相補佐官と一緒になり、これまでも消費税率10%への引き上げに合わせた実施されたポイント還元制度や、安倍首相がゴリ押しして法案を強行採決させた働き方改革など、数々のとんでもない政策を推進。現在も、安倍首相が推し進めようとしている「全世代型社会保障制度改革」において検討会議の事実上の事務方トップに就任するなど、安倍首相からの信任が厚いことでも知られている。
そして、この今井−新原ラインが結託し「新型コロナ対策」として取り仕切ったのが、この「Go Toキャンペーン」だった。