解剖医から寄せられた「検査断られた」「死体は検査してもらえない」の声
また、アンケートでは具体的な拒否の状況についての説明もあったが、その中身も信じがたいものだった。「日本法医病理学会」の公式HPから抜粋して以下に紹介しておこう。
【2月中旬 男性 60代】
各種臓器の検査を国立感染症研究所に相談したところ、咽頭ぬぐい液で陽性が出てから応需するとのことで断られた。その後咽頭ぬぐい液の相談を保健所にしたところ断わられた。
【3月中旬 男性 60代】
検案医がウイルス性肺炎疑いと判断し、帰国者・接触者相談センター経由で保健所に連絡するも検査は断られたが、後日、捜査機関が保健所から事情を聞いたところ、今後は、できるだけ対応するとの回答が得られた
【4月上旬 70代 男性】
独居者.自宅で死亡発見.関係者の証言から,数日前から微熱があったことから,保健所に相談したところ,濃厚接触が明確でないことから検査対象ではないとのことであった.(原文ママ)
【4月上旬 80代 男性】
検体採取前の相談で断られた
【4月上旬 70代 男性】
検体採取前の相談すらできなかった
【4月上旬 30代 男性】
某病院入院患者。病院内で数名の陽性者が出ていた。死因はコロナは否定的なので、診断のためではなく、検視や解剖で病院関係者や遺体と接触した者への感染拡大を懸念しての検査だが断られた。
この「日本法医病理学会」の解剖医アンケートでは、具体的な事例以外でも、保健所が検査に積極的でないことを証言しているコメントがいくつもあった。
〈保健所から疑いが強いもののみにしてほしい、検体は1個のみと言われている。民間検査会社から死体は受けないと言われている。某大学病院で検査受け入れ可能か問い合わせ中。〉
〈CTで肺炎像を確認したので依頼した。保健所より「厚労省が一定以上の条件が整わないと検査をしてくれない」との話があった。〉
〈一般的には「死体は検査してもらえない」という認識が広まっている。〉
ここからは、解剖医の間に「死体は検査してもらえない」という認識が広まり、諦めムードさえ漂っていることがうかがえる。解剖医が最初から保健所に検査を依頼しなくなっているケースも出てきているのではないか。
しかも、問題はこの数字や実態が、「解剖医」のアンケートであることだ。解剖医は変死や異状死の死因を解明する専門家であるため、死因を厳密に特定する必要がある。にもかかわらず、保健所から検査を拒否され、「死体は検査してもらえない」という認識が広まっているのだ。
多くのパターンは解剖医まで行かない段階で臨床医が死因を判断するのだが、その場合は当然、解剖医などより死因の特定のハードルが低い。だとしたら、全体では何倍もの死亡者検査拒否、検査諦めがあると考えるのが、普通だろう。
いずれにしても、この調査で、安倍首相の説明が嘘だったことはっきり完全にはっきりしていた。にもかかわらず、安倍首相は4日の会見でまたぞろ、「検査しているから肺炎患者にコロナ患者がまじっていることはない」「新型コロナウイルスを疑うような所見があれば、必ずPCR検査を行う」などと強弁したのである。
安倍首相はこうした現実を無視した強弁がいかなる事態を招いているのか、まだわかっていないのか。安倍政権がPCR検査を抑制してきたことが、感染拡大を招き医療を逼迫させたことは、もはや誰の目にも明らかだ。早期に検査体制を整備していれば、防ぐことができたはずの重症者や死者を多数出した、安倍首相の責任はきわめて重い。
(編集部)
最終更新:2020.05.06 06:14