内閣官房HP・Twitterより
東京都で5月1日、2日と連続で感染者数が150人を超えるなど、収束の目処がたたない新型コロナウイルス。安倍首相も緊急事態宣言の延長を決定した。
安倍政権の危機対応の甘さが長引く感染を生み出したことは、今さら説明するまでもないが、この甘い感染対策は政権内部でも同様らしい。首相のお膝元である内閣官房や内閣府で感染者が相次いでいるのだ。
「内閣府や内閣官房が入る建物で5人が新型コロナの陽性反応が出ました。なかでも注目を集めたのが、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室に所属する40代の男性職員の感染です。早速、内閣府や内閣官房の消毒を実施しましたが、この職員は広報も担当しており、感染ルートをめぐって騒然としました。一緒に東大病院を視察した新型コロナ担当の西村康稔経済再生担当大臣は一時、自宅待機に追い込まれています」(全国紙官邸担当記者)
しかも、官邸関係者の間では、コロナ対策のもっとも中枢にいる部署の“危機管理の甘さ”が指摘されている。官邸関係者がこう証言する。
「感染者が出た内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策推進室は、感染症対策や経済対策を調整する部署。しかし、官邸にはそれとは別に、パンデミックが起きたときの緊急対応を行う中枢部隊がある。通称“事態室”と呼んでいる部署だが、ここが問題なんだ」
“事態室”というのは聞き慣れない名前だが、取材すると、官邸にはたしかに内部でそう呼ばれている部署があった。この部署はもともと内閣危機管理監が率いる「内閣安全保障・危機管理室」のなかにあったもの。しかし「内閣安全保障・危機管理室」は2014年、国家安全保障局が設置されたのにともない、廃止された。ただし、国家安全保障局が引き継いだ機能は安全保障上の危機管理のみであったため、国内の緊急事態への対応は、正式な組織名のないまま「内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付」として継続されることになった。これが内部で“事態室”と呼ばれているようだ。
「この事態室が対応する事態には、武力攻撃事態や大規模自然災害、重大事故、重大事件、大量避難民流入ともに、『新型インフルエンザ(ヒト・ヒト感染)』が入っている。そのため、いまはコロナ対策に注力し、パンデミックになったときのシミュレーション、官邸や警察、自衛隊の危機対応の取りまとめをおこなっているんだ」
名前もない部署が「パンデミック対策の中枢」になっているというだけでも驚きだが、もっと恐ろしいのは、この部署の危機管理のお粗末ぶりだ。パンデミック対策どころか、今度は“事態室”から官邸クラスターが発生するんじゃないか、という危惧の声があがっているのだ。
「“事態室”は官邸とは別の場所に部屋があるんだが、今回のような緊急事態には輪番で官邸地下の危機管理オペレーションルームに詰めることになっている。しかし、ここは外に通じる窓もなく、究極の『三密』空間。スタッフに1人でも感染者がいれば、官邸が一気にクラスター化するんじゃないかと戦々恐々なんだよ。それと“事態室”のメンバーは人数が少なく全員が不眠不休状態のため、疲弊しきっていることも心配の要因になっている」
さらに、もうひとつ危惧されるのは“事態室”のパワハラ体質だ。2月、中国・武漢の帰国者が滞在していた埼玉県和光市の国立保健医療科学院で、コロナ担当の内閣官房職員が飛び降り自殺したというニュースをご記憶だろうか。
実はこの職員、警視庁からコロナ担当としてまさに“事態室”に出向していた人物だったのである。警視庁関係者がこう証言する。
「自殺したI氏は37歳の警視庁公安部の警部。ノンキャリながらエースと期待された人物でした。自殺したのが帰国者の滞在施設だったため、直後には帰国者から詰め寄られて板挟みになった、などという報道もありましたが、施設に行ってまだ2日目だし、そんなことで自殺するような人間じゃない。“事態室”にはパワハラの噂があり、I氏も総務省出身の上司から激しいパワハラを受けていたんじゃないかといわれている。少なくとも、警視庁内では『事態室のパワハラが原因』という認識が広がっていますね」
職員の自殺の原因については確定的ではないが、いずれにしても、新型コロナのパンデミック対策を担う官邸中枢の組織としては、あまりにもお粗末な職場事情といえるだろう。しかも最大の問題は、前述したクラスターとなりかねない職場環境だ。安倍首相はまず、お膝元の感染対策を見直すべきではないか。
(小和田三郎)
最終更新:2020.05.05 11:49