衆議院インターネット審議中継(4月28日)より
「アベノマスク」をめぐり、政府が頑なに公表しなかった妊婦向け布マスクの受注業者の1社が「株式会社ユースビオ」という会社であることが昨日ようやく公表されたが、それがさらなる疑念を生んでいる。
このユースビオの社長に取材をおこなったメディアは「癒着は一切ない」「癒着の噂全否定」などと報じているが、疑念は深まるばかりだ。
そもそも、他の受注業者は興和や伊藤忠商事、縫製大手であるマツオカコーポレーションといった名の知られた企業である一方、ユースビオはホームページさえも見つからない会社。さらに、法人登記簿に記載する定款の「目的」を4月1日に変更、10日に登記されているのだが、変更前は「再生可能エネルギー生産」や「バイオガス発酵システム」の研究開発と販売や、「ユーグレナ等の微細藻類」「オリゴ糖等の糖質」の生産・加工と販売などといったものが並び、マスクに結びつきそうな事業目的がなかった。しかも、同社社長が2018年には消費税約3100万円を免れたとして消費税法違反などの容疑で懲役1年6月、執行猶予3年の判決が出ていたことも判明。こうした情報から、ネット上では「どうして政府はこの会社に受注したの?」と訝しむ声が次々にあがった。
一方、同社の社長は契約の経緯について、「もともとは、福島県や山形県につてがあって、そこにベトナム製のマスクを用意してほしいと頼まれた。その準備をしていたら、『国が一括で集めることになった』と言われたので、そちらにシフトしてスペック表やサンプルを提出し、受注する流れになった」(デイリースポーツ27日付)と語り、自身が公明党員であるとし、安倍首相や政府との癒着についても「ないですよ。安倍さんとも自民党とも、何の付き合いもない」と否定。執行猶予中であることも認めている。
しかし、国内外にマスク製造や輸入が可能な企業は数多くあるはずなのに、どうしてこの会社が選ばれたのかという疑問は残ったまま。いや、大前提として、ここまで同社との契約に「何かあるのでは」と疑いの目が集まるのは、政府が必死で企業名を隠してきたためだ。
そして、実際に本日の衆院予算委員会でもユースビオが受注企業に選ばれた問題について追及がおこなわれたが、安倍政権は何ら納得のいく説明をおこなわず、正当性だけを主張したのだ。
まず、この問題を取り上げた立憲民主党の大串博志衆院議員が「この会社はどういう会社か」と質問すると、加藤勝信厚労相は「福島県福島市に本社を持って、輸出入業務をおこなっている企業」と答弁。さらに「3月16日に予備費で契約した。緊急随契(随意契約)」「木質ペレットの関係の輸出入業をやっていた」と述べた。
だが、前述したように、法人登記簿には最近まで事業目的にマスク製造や輸出入に関連した事業はなく、4月1日におこなった変更によって「貿易及び輸出入代行業並びにそれらの仲介及びコンサルティング」が追加されたばかりだ。つまり、政府との契約後に「輸出入代行業務・仲介」が足されていたのである。
そこで、大串議員は「3月中は会社の目的として輸出入をおこなう定款になっていなかった。そういう会社だと知らないで契約したのか」と問いただしたのだが、ここで加藤厚労相は“輸出入については別の会社が担っている”と言い出し、それは「シマトレーディング」という会社であり、ユースビオは「マスクの布の調達、納品時期等の調整」、シマトレーディングは「生産・輸出入の担当」だったと説明。ユースビオとシマトレーディングの2社が一緒になった契約額が5.2億円だと述べたのだ。