YouTubeで活動を再開した宮迫博之
本末転倒、付和雷同──。宮迫博之に対するメディアの反応を見て、こんな四文字熟語が口をついて出た。何しろ、宮迫がYouTubeで活動を再開するや、ネットで「嘘くさい」「復帰すんな」「そのまま引退しろ」とヒステリックな罵倒が飛びかっただけでなく、ワイドショーやスポーツ紙までが一斉にこんな調子で宮迫を叩きまくったのだ。
「きちんと手順を踏んだロンブー亮の誠実な姿勢とは対照的」「吉本興業との話し合いも解決していないのに身勝手」「迷惑をかけたテレビ局をないがしろにしてYou Tubeで復帰は筋違い」「ロンブー亮の復帰前日はおかしい」
驚いたことに、タレントや芸人仲間たちからも一斉に宮迫批判が飛び出した。「(宮迫からYouTubeの)報告はあったが相談ではなかった」と責任逃れをしつつ「さんまさんのところにお世話になっているわけやし、オレが何を言う立場でもない」と突き放した松本人志を筆頭に、「順番として」「会社とちゃんと話をしてまとまってから」と説教した 岡村隆史、さらには、一時、吉本に反旗を翻していたはずの加藤浩次までがロンブー亮の復帰トークライブの前に宮迫がYouTubeデビューしたことを問題視し「ちょっとこれがあるのに宮迫さんなんで?って…」などと苦言を呈していた。
まさに袋叩き状態。たしかに、宮迫のYouTube戦略はズレてる印象は否めないが、だからといってここまで寄ってたかって叩くような話なのか。改めて言っておくが、宮迫がやったことは、反社会勢力のパーティにそうとは知らないで出席し、ギャラをもらったもののそれを言い出せず隠していたというもの。批判されたり一時的に謹慎するのはやむをえないとしても、あれから半年以上経ってなお、許されないというほどの話ではないだろう。
テレビや舞台でなくYouTubeで活動を再開したことも批判の対象になっているが、それこそ復帰を許されていないから、YouTubeを選んだだけではないか。
だいたい政界では、暴力団関係者から献金を受けたことがわかっている安倍内閣の武田良太大臣がいまも辞任することなく、全国の警察を統括する国家公安委員長の職にとどまっているのだ。そのことには何も文句を言わないのに、なぜ宮迫だけこんなバッシングを受けなければならないのか。
この騒動で一貫して正論を口にしていた数少ない芸人のひとりであるカンニング竹山が今回も『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ、1月29日放送)で、「思ったんですけど、我々は何に怒ってるんだろうかって、なぜ宮迫さんはこんなことになってんのかなって、なぜテレビに出られないのかなって、なぜ排除の方向に……。元のこと(闇営業)はわかりますよ、でもここまで引っ張ってやることなの? 我々は。世間もね。普通に出しちゃったほうがいいんじゃない。観たくない? ちょっと異常すぎないか、やってること。何に怒ってるの、いったい」と憤っていたが、そのとおりだろう。
しかも、呆れたのが、ワイドショーでは「吉本興業に迷惑をかけたのに」「吉本興業と話し合わないうちに復帰はおかしい」とかいう批判まで飛び出していたことだ。
おいおい。いつから吉本興業は被害者になったのか。みんな忘れてしまったようなので、これまた振り返っておくが、吉本興業はあの闇営業事件で、積極的に事件を隠蔽した“共犯者”なのだ。
まず、最初の隠蔽は、吉本興業が6月6日夕方に「調査の結果、金銭授受はない」と嘘の発表をし、宮迫らを厳重注意処分で済ませたことだ。
吉本サイドや御用マスコミはこれを「ヒアリングしたのに、宮迫らが嘘をついたため」「吉本興業に責任はない」などと話をすり替えているが、いくら芸人たちが口裏を合わせても、11人もいるのだから、吉本が徹底調査をしていれば、どこかで証言に綻びや矛盾が出てきて嘘が判明したはずだ。
また、仮に芸人たちが口を割らなかったとしても、ネットでさんざん指摘されていたように、芸人が金ももらわず、あんなサービスをするわけがないのは、マネジメントのプロである吉本がいちばん知っていたはず。にもかかわらず、吉本がすぐに「調査の結果、金銭授受はない」としたのは、多大な損害が生じる番組降板や謹慎を避けるために、嘘を知りながら、それに乗っかったとしか思えない。
そして、宮迫と亮が会見で明らかにしたように、彼らがすぐに「金銭を受け取った」と訂正して報告した後も、吉本興業は2週間以上にわたって「今さひっくり返せない」「静観です」と、事実を隠蔽し、虚偽を強要してきた。