12月6日『ひるおび!』で菅擁護を連発した恵俊彰
先日、田崎史郎氏がワイドショーに出なくなった結果、安倍応援団番組『ひるおび!』(TBS)までもが、まともな安倍政権批判ができるようになっているとお伝えしたが、訂正しなければいけなくなった。やはり『ひるおび!』は『ひるおび!』だった。
12月6日の放送で、「鉄壁の菅官房長官 説明に苦心 揺らぐ政権の“屋台骨”」として一連の「桜を見る会」での菅義偉官房長官の対応について特集したのだが、これがなんと菅官房長官大擁護大会だったのだ。とくに、MCの恵俊彰の無理やりな菅擁護は、ジャーナリズムとして以前に、テレビ番組の進行としてもちょっとありえないくらい不自然なものだった。
あらためてその異常な中身を振り返ってみよう。番組はまず例の「バックアップデータは行政文書じゃない」というトンデモ発言が菅官房長官の口から飛び出した会見をVTRで紹介するところから始まった。VTRを受けて政治アナリストの伊藤惇夫氏や共同通信社論説委員の柿崎明二氏、岩井奉信日本大学教授といったコメンテーターが経緯や今後の見通しを解説していると、唐突にMCの恵がこんなことを言い出す。
「その菅官房長官、なんと今日お誕生日でした!」
で、モニターには菅官房長官の顔写真とともに、「鉄壁の官房長官」「1948年12月6日生まれ」という文字が映し出されたのである。
この謎展開に、スタジオ観覧者からも失笑の声がもれていたが、恵はお構いなし。誕生日話を続け、記者会見で誕生日を祝われた菅官房長官が返した言葉まで紹介し始める。
それは、「政権発足以来、総理のリーダーシップのもとに何をなすべきかということを明確に掲げて、ひとつひとつの課題に全力で取り組んだ結果として、7年近く過ぎたのかというのが正直な気持ちであります」というおもしろくもなんともない定型のセリフなのだが、番組はご丁寧にフリップまで用意し読み上げたあと、実際に菅が話している映像まで流した。菅官房長官の会見を報じる番組は数あれど、こんな場面をわざわざ流したの、『ひるおび!』くらいだろう。
このあと、恵が「ここのところ、そのなんか『追い込まれてるんですか、菅官房長官』という目線でちょっと今日、お伝えしようと思うんですが」と言い出したので、ようやく「桜を見る会」問題に話が戻るのかと思ったら、さにあらず。八代英輝弁護士に向かってこう話を切り出した。
「菅官房長官というと、八代さん、ビシッと答えてらっしゃるという(イメージ)……」
八代も「安定のガースーって言われるぐらいですからね」と阿吽の呼吸で答える。
さらに恵は、曜日コメンテーターの三田寛子にもこう話を振る。
「ですから、伊藤(惇夫)さんに聞いたんですけれども、記者会見も多いじゃないですか。資料に自分で付箋を入れて、質問に対して的確に答えていくというのが菅官房長官という、三田さん、そういうイメージですか?」
八代へのフリに続き、菅を褒めるコメントが欲しいというのがミエミエだろう。
しかし、三田はこれに同調せず、「淡々といろんなピンチみたいなことがあっても乗り越えられて、冷静にすっとお話しされるイメージがあったんで、今回、見てて、モヤモヤ、不安っていうか、気もしますよねー」と、逆に最近の菅に対して「モヤモヤ」「不安」を感じるという国民の声を代弁。続いて、曜日コメンテーターでマーケティングアナリストの原田曜平氏からも「起きている出来事がめちゃくちゃレベルが低い」「バックアップできないとか破棄しちゃったとか、普通の会社だったら叩かれて終わり」「言い訳なんてほんとはない」と手厳しいコメントが発せられた。すると、恵はどちらの発言もまったく掘り下げず、スルーしてしまったのである。
続いて、番組では、答えに窮した菅官房長官が官僚から何回もメモをもらい、多くのメディアが「異変」「ほころび」と報じた4日と5日の会見について取り上げるのだが、これについては恵自身が露骨な擁護コメントを連発した。菅官房長官が混乱してメモをもらっているシーンのVTRが流れると、恵はこんなふうに解説したのだ。
「非常に慎重な菅官房長官です」
「こういうことはあまりないんですよ」
「ですから、菅官房長官、とくに公文書のことになると、岩井さん、ちゃんと資料(見て)、ちゃんと言わなきゃいけませんからねと、言葉を選んでらっしゃるように感じるんですけれども」
あの日の菅官房長官は「桜を見る会」について支離滅裂な言い訳をしているうちに混乱して答えに窮しただけなのに、「慎重」「ちゃんと資料見て、言葉を選んでらっしゃる」って、いったいどこまで菅に甘いのかという話だろう。