共同通信のスクープ
戦中の日本軍をめぐる慰安婦問題で、軍の関与と強制性を示す新史料を共同通信がスクープした。6日の共同通信によれば、内閣官房が2017、2018年に新たに収集した23件の関連公文書のうち、在中国日本領事館の報告書に、こんな記述があったという。
「陸軍側は兵員70名に対し1名位の酌婦を要する意向」
「軍用車に便乗南下したる特殊婦女」
同じく共同によれば、この「酌婦」や「特殊婦女」は、別の報告書内で「娼妓と同様」「醜業を強いられ」と説明され、慰安婦を指しているという。共同は「青島総領事の報告書」の一部画像を公開しているが、文書には「機密」と記されている。内容の全容は、この後明らかになっていくだろうが、軍が女性たちを強制的に慰安婦にしていたことを示す公文書であることは間違いないだろう。
本サイトが政府関係者に取材したところ、従軍慰安婦関連公文書の収集を続けている内閣官房はこの新史料を把握しながら、公表していなかった。それを共同通信が独自ルートで入手したということらしい。これは、内閣官房が、慰安婦についての軍関与や強制性を否定したい安倍政権を忖度して“隠蔽”していたとしか考えられない。
いずれにせよ、現在、報じられているセンテンスには「陸軍側は兵士70名に対し」「軍用車に便乗」とあり、公文書として軍の直接的な関与を示しているのは確定的。さらに、別の報告書には「醜業を強いられ」とあることから、女性たちを強制的に従軍慰安婦にした証拠となる。
ところが、ネット上ではこの新史料報道に対しも、またぞろネトウヨたちがこんなふうに喚き立てている。
〈はい嘘。娼妓は遊女、醜業は売春を指します。慰安婦ではなく売春婦だったことの証拠です〉
〈売春婦がいたことは、事実ですが?〉
〈そりゃ領事館で働くエリート様から見れば売春婦は醜業だろうよ〉
〈この資料を素直に読めば、軍や政府は関与していないと受け取れる〉
この期に及んで、慰安婦の軍関与を否定し、「単なる売春婦だった」などと嘯く頭の悪さはつくづく呆れる。そもそも、この新史料に限らず、日本軍が組織的に女性たちを慰安婦にしていたことは、これまでの史料や当時の軍関係者の証言からも明らかになっていることだ。
たとえば、先日亡くなった海軍出身の中曽根康弘元首相は、自らの回想記のなかに、インドネシアで「苦心して、慰安所をつくってやった」ことを自慢話として書いている。また、陸軍出身の鹿内信隆・元産経新聞社長も「調弁する女の耐久度とか消耗度」のチェックなどを含む慰安所の設置方法を経理学校で教わったと語っている。これらの証言は防衛省などが保持する当時の軍の史料でも裏付けされている。つまり、慰安所と「慰安婦」が軍主導であった事実を示しているのだ。
ネトウヨたちは「醜業」という言葉をとってきて「売春婦のことだ!」と理解できないことをほざいているが、軍関係者が当時、自分たちで慰安所をつくりながら、それを侮蔑的な言葉で表現していたことも、こうした数々の証言から明らかになっていることだ。たとえば前述の鹿内信隆氏は慰安所のことを「ピー屋」と呼び、軍内部での侮蔑的な言い回しを口にしていた。そうした言葉を根拠にいくら「売春婦」だと決めつけても、なんの説得力もない。