組織委は有償スタッフを「即戦力として高い専門性」と主張するが、求人広告には「社会人経験があればOK!」
なぜ同じ仕事内容なのに、一方は時給1600円で一方はタダ働きなのか。理不尽な待遇差について大会組織委員会戦略広報課に質問したところ、〈ボランティアは、資格要件を要せず(移動サポートを除く)、任意かつ無償で参加いただくことを前提〉に広く募集したのに対し、〈有償の職員は、即戦力として高い専門性を発揮し、職務を遂行することを前提〉などとし、〈両者は役割や職務(活動)に対する責任の有無など、スタッフとしての性質が大きく異なり、代替の関係にはないと考えております〉と回答した。
ボランティアは〈資格要件を要せず〉、有償アルバイトは〈即戦力として高い専門性〉という主張は、とてもじゃないが額面通りに受け取れない。というのは、「タウンワーク」の求人情報には「即戦力として高い専門性」どころか、〈社会人経験があればOK!(アルバイトの場合はリーダー経験ある方)〉と書かれているのだ。「タウンワーク」には「歓迎されるスキル」として「英語力」などが挙げられているが、ボランティア募集でも「積極的に応募していただきたい方」として〈英語、その他言語及び手話のスキルを活かしたい方〉などが挙げられており、大差ない。
しかも、たとえば「タウンワーク」に掲載された「メディカル」という項目には〈競技会場等で、アスリートや観客等へ医療サービスを行う医師のサポートを担うお仕事〉との説明があるのに対し、東京五輪組織委HPのボランティアの活動内容のひとつ「ヘルスケア」は〈選手にけが人が出た場合、医務室への搬送サポートを行います。「ファーストレスポンダー」は応急手当セットを所持して2人1組で会場内を巡回します。また、ドーピング検査のサポートは、対象選手への告知、検査室への誘導や受付を行います。(検体採取は有資格者が行います)〉と説明されている。むしろ「ファーストレスポンダー」とか「ドーピング検査のサポート」とかボランティアの活動内容のほうがよりスキルや責任を求められているようにすら思える。他のカテゴリーでも同様の傾向は見られる。
そもそもボランティア募集の詳細が明らかになった時点で、空港や会場での海外要人の接遇、関係者が会場間を移動する際の車の運転、選手がメディアからインタビューを受ける際の外国語でのコミュニケーションの補助、ドーピング検査のサポート、大会を記録するための写真や動画の編集サポートといった業務内容について、タダ働き人員で補うレベルの仕事ではなく、プロの通訳やドライバーを有償で雇用すべき仕事ではないかとの指摘がされていたくらいだ。
組織委は〈ボランティアと今回募集の大会スタッフは違います〉と強弁しているが、無償ボランティアと「時給1600円スタッフ」という、非常に大きな待遇差があるのは、どう考えてもおかしい。無償ボランティアにもそれなりの時給や日当を出すべきなのではないか。
付言しておくと、ボランティアは「10日以上参加できること」が応募条件とされており、また「活動分野」や「活動場所」について「必ずしも希望に添えない」との注意書きもある。ボランティアの延べ人数は多いが、稼働日数が足りないため、あるいは、希望者が特定の活動に偏っており足りない分野があるため、それを有償バイトで補うという可能性も考えづらい。