河井克行公式サイトより
安倍政権の“辞任ドミノ”がはじまった。先週末には菅原一秀経産相が公職選挙法違反の「有権者買収」疑惑で辞任したが、それから1週間も経たないうちに、本日、河井克行法相が辞任した。今度は「運動員買収」の公選法違反疑惑だ。
すでに報じられているとおり、辞任の引き金になったのは本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)。7月におこなわれた参院選では河井法相の妻である案里氏が広島選挙区から出馬し当選したが、記事ではこの選挙戦において案里氏の陣営が車上運動員、いわゆるウグイス嬢に対して法定上限額である日当1万5000円を超える3万円を支払っていたことをスクープ。それも、領収書の写しや実際の支払額を記した“裏帳簿”を掲載するという物証付きだった。
こうした運動員の買収行為は公選法で禁止されており、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。また、候補者本人が直接関与していなくても候補者の秘書や出納責任者、親族といった一定の関係者の刑が確定し「連座制」が適用されれば、当選は無効になる。
しかも記事によると、案里氏の選対を実質的に取り仕切り、金の差配をおこなっていたのは克行氏で、領収書を2枚に分けて法定上限額の倍の日当を支払っていたことを隠す工作を指示していたのも昨年末まで克行氏の公設第二秘書を務めていた人物だという。法務大臣が法律違反をおこなっていたなどとなれば、これは言語道断だ。
「河井前法相は辞任後のぶら下がり取材でも『今回の一件は私も妻もまったくあずかり知らない』などと主張したが、官邸は国会での追及に耐えられないと判断したのだろう。記事ではジャガイモやマンゴー、トウモロコシなどを有権者に配っていたという菅原前経産相と同様の有権者買収疑惑も暴かれていたが、じつは河井前法相にはこのほかにも重大な疑惑があるとも囁かれており、それを見越した辞任ではないかという見方も出ている」(大手紙政治部記者)
ともかく、内閣改造からわずか約1カ月半、しかも1週間のあいだにスキャンダルで立てつづけに2人も大臣が辞任し、国会を空転させている責任は、当然、安倍首相にある。しかし、安倍首相からは「責任をとる」姿勢はまったくみられない。
実際、河井氏の辞任について、安倍首相は「河井大臣を任命したのは私だ。こうした結果となった責任を痛感している。国民のみなさまに深くおわびしたい」と述べたが、つい6日前にも菅原前経産相の辞任を受けて「任命責任は私にあり、こうした事態になってしまったことに対し国民のみなさまに深くおわびする」と言ったばかり。そもそも、安倍首相が第二次安倍政権で大臣の辞任は10人目。松島みどり元法相と小渕優子元経産相はダブル辞任だったため、安倍首相が「任命責任は私にある」と述べるのは、これで9回目だ。
9回も同じ台詞を繰り返しておきながら、一度もその責任をとっていない安倍首相。無論、記者からは具体的にどう責任をとるつもりなのかと質問も飛んだが、その答えは「国民のみなさまの信頼を回復してしっかりと行政を前に進めていくこと。そのことにおいて責任を果たしていきたい」というもの。ようするに、安倍首相に「責任をとる」つもりなど微塵もないのだ。
しかも、メディアは菅原前経産相につづいて河井前法相も菅義偉官房長官の側近だったことから「“ポスト安倍”の菅官房長官にも影響か」などと報じているが、河井前法相は菅官房長官だけではなく、安倍首相とも密接な関係だったのだ。