チョラクさんの悲痛な訴え「難民申請を認めてくれないなら、他の国に行かせて」
チョラクさんにもその考えはあるようだ。しかし、日本の制度がそれを許さない。
「思っても行けない。行くことはできない。トルコ以外は無理。日本は認めない。『トルコに帰りなさい』(と言うだけ)。(トルコに)行くとしたら命の危険性があるから、それの責任は誰がもつの? 『私たちは難民の申請者の面倒をみることができない』って言うんであれば、韓国に行かせてください、中国に行かせてください、まわりの国どこでもいいから(行かせてください)」
小山と加藤は日本に逃れてきた人々が置かれているあまりにひどい状況に絶句。なぜこんな状況が生まれているのか、国際弁護士の清原博弁護士に話を聞きにいく。
そこで清原弁護士はまず、「日本政府だけが、国際的に見て、難民認定基準のハードルがあまりにも高すぎる。たとえば、『その国で紛争が起きているから、その紛争で自分がもしかしたら危険な目に遭うかもしれない、だから逃げてきました』というだけでは、まだ日本は迫害と認めてはいないんですよ。あくまでも迫害というのは、『あなた本人に具体的にどんな危険が差し迫ったんですか? たとえば、あなた本人に銃口が向けられたとか、拉致されたとか、そこまできちんと説明しなさい。できれば証拠も出しなさい』。でも、それは無理ですよね」と、日本の難民申請の問題を指摘する。
国際社会の基準から見てあり得ないほど少ないながらも、日本も年間に数十人の難民申請を認めている。しかし、そのなかにクルド人はひとりも入っていない。その背景について、清原弁護士は“トルコからの独立運動をしているクルド人はトルコ政府から見れば「テロリスト」であり、トルコと友好な関係を堅持したいとする日本政府がクルド人を難民として認定することはトルコの政策を批判することと捉えられかねないという政治的背景があるのでは”という趣旨の解説する(「テロリスト」というのは明らかに事実と異なるが)。
ただし、前述したように日本の難民認定の極端な少なさはクルド人に限ったものではないので、トルコ政府との関係は方便にすぎず、根本的には日本の行政と社会の排外的意識の問題だろう。
そんななか、当局側では「不法滞在は犯罪であり、そういった犯罪者を収容することは当然」という論理が働き、現在のような状況が生まれている。