国会で共産党・小池晃に対案を突きつけられた安倍首相は…
にもかかわらず、安倍首相は日本記者クラブでの党首討論会で、こんなことを言い出した。
「安倍政権においてですね、消費税率をこれ以上引き上げることは、まったく考えておりません」
こう言われると「これ以上は上げないと言っているし、10%への引き上げも仕方がないか」と思う人もいるだろう。だが、騙されてはいけない。そもそも安倍首相は総裁任期を延長しつづけており、一体いつまでのさばるつもりなのか未知数な上、法人税率の引き下げなどで安倍首相が言いなりになってきた経団連は、昨年4月に政府への提言として公表した「わが国財政の健全化に向けた基本的考え方」のなかで〈税率10%超への消費増税〉を提唱。ちなみに、2015年の提言「『豊かで活力ある日本』の再生」では、経団連は消費税率10%台後半への引き上げを政府に求めている。
賃金は上がらず、消費増税で生活はさらに苦しくなり、その上、老後は自助でどうにかしろと迫るのに、大企業や富裕層を優遇しつづける安倍政権。──そんななか、これに「NO!」を叩きつけているのが野党だ。
安倍政権と対峙する野党は、こうした優遇税制と庶民への痛みの押し付けを批判し、今回の参院選で税制の見直しを打ち出している。
たとえば、立憲民主党は、選挙公約で〈消費税率10%への引き上げは凍結〉〈金融所得課税や法人税などを見直し、税の累進制を強化して公平な税制へ転換〉と明記。
共産党は消費増税の中止はもちろん、さらに具体的な財源提案をおこなっており、「大企業優遇税制の見直し」で4兆円、「法人税率引き下げをやめ、中小企業を除いて安倍政権以前の水準に戻す」ことで2.5兆円、「富裕層への証券課税の強化」で1.2兆円、「富裕層の各種控除の見直しなど」で1.9兆円など、合計で17.5兆円の当面の財源確保案を提示し、同時に「マクロ経済スライド」の中止も訴えている。
また、山本太郎氏が立ち上げた「れいわ新選組」は消費税廃止を訴え、法人税に累進性を導入することを公約に謳っている。
しかし、こうした野党の提案を安倍首相は無視。6月10日の参院決算員会では、マクロ経済スライドと富裕層・大企業優遇税制の見直しを迫った共産党・小池晃議員に対し、安倍首相はこう言って一蹴した。
「まったく馬鹿げた政策なんだろうと、こう言わざるを得ない。間違った政策だと思いますよ、それは」
ようするに、安倍首相は「野党は財源の裏打ちのある具体的な議論をせずに、不安ばっかり煽っている」と言うが、実際には「議論をせずに不安を煽っている」のは、安倍首相のほうなのである。
そして、馬鹿げているのは、現実には国民の多くを苦しい生活に追い込んでいる政策をあらためるでもなくありもしない成果を謳い、「年金は増やせる」などと無責任に言い放っている安倍首相のほうなのではないか。
だからこそ、繰り返したい。今回の選挙の争点は「憲法改正」などではなく「わたしたちの生活」であり、消費税の増税中止・廃止、大企業・富裕層の優遇税制を見直すと公約で掲げる野党か、それともそれを「馬鹿げた案」だと言い、経済悪化のなかで消費増税を決行しようとしている与党か、どちらを選ぶかという選挙なのだ。
(編集部)
最終更新:2019.07.15 12:24