安倍政権への忖度で官僚の不祥事報道までタブー扱いに
文科省は経産省と比べれば、マスコミタブー度は低いかもしれないが、それでもこの報道ぶりを見ていると、現在の安倍政権下においては官僚の不祥事を批判することすらできなくなっているとしか思えない。言っておくが、これは単なる個人の犯罪で済まされるものではなく、経産省・文科省と短期間に連続で発覚し、いずれも職場=庁舎内での使用が疑われており、霞が関全体に広く薬物が蔓延している可能性も十分に考えられる。背景にある官僚の抱える過大なストレスやモラル低下など、官僚組織そのものが検証されるべき事案だろう。にも関わらずこの報道の異常な少なさを見ていると、メディアは少しでも安倍政権のマイナスになりそうなことはできれば触れたくないという忖度・自主規制・思考停止に陥っているとしか思えない。
大手事務所など後ろ盾を持たない芸能人や一般市民に対しては、恋愛スキャンダルやご近所トラブル程度でこれでもかとばかりにバッシングし、一方でキャリア官僚という公人の“連続薬物事件”という重大疑惑は申し訳程度にその事実を報じるだけ。ピエール瀧や田口・小嶺、ASKAの薬物事件でヒステリックに批判するなら、短期間に連続して発覚した連続薬物事件の背景や霞が関での蔓延の実態、その入手ルート、さらには安倍政権下で官僚が置かれたストレスなど検証されるべきことはいくらでもある。
行政を担う霞が関の官僚たちが売人の新たなターゲットになっているのなら、小嶺麗奈の“六本木ルート”なるものなどより、“霞が関ルート”の解明のほうがよほど重要だろうが、そうした報道はまったく見られない。官僚のブラック労働は古くから指摘されたことだが、それに加えここ数年の安倍政権下で官僚がさらなるストレスに晒されているのではないかということも議論すべきだと思うが、そうした話題も一切ない。電気グルーヴの作品の販売停止を声高に正当化しようとがなりたてていたコメンテーター連中は、経産省がかかわる大阪万博や文科省がかかわる東京五輪の返上、文科省検定の教科書の回収などをいつもの調子で叫んでみたらどうなのか。
ここ最近、官僚や元官僚の事件のマスコミの不公平な扱いに「上級国民」という陰謀論めいたスラングが広まっているが、こうした状況を見ていると、安倍政権の息がかかっているかどうかで国民が「上級」と「下級」に選別され、マスコミもそれに準じて報道を制御する。そんな差別的社会が、現実になろうとしているのかもしれない。しかし繰り返すが、“霞が関連続薬物事件”は、霞が関=官僚組織に何が起きているのか、それが検証されるべき重大なものだ。メディアはその重大性を認識するべきだろう。
(伊勢崎馨)
最終更新:2019.05.31 12:54