安倍首相の指示でなく個人の判断で動いたと強弁する首相秘書官たち
そして、有識者検討会にまでわざわざ介入し、度重なる圧力をかけるというこの行為は、中江氏が仕える安倍首相の意向がそこにはあったとしか考えられないものだ。
もはや言い逃れはできない状態に追い込まれた、中江前首相秘書官と安倍首相。だが、驚くべきことに、中江前首相秘書官は25日の衆院予算委員会で公然とこう開き直ったのだ。
「総理秘書官は、担当する分野・政策について、各省庁から説明を聞いて議論することは常々ある。議論するなかで個人的な見解を伝えることも往々にある」
「総理の指示とか、他の秘書官の指示ということではなくて、私の単独の意思で申し上げた。もちろん公務の一貫です」
圧力ではなく「個人的見解」であり、誰にも指示を受けていない「単独の意思」だ──。この中江前首相秘書官の主張は、あの釈明にそっくりではないか。そう、加計学園問題で「首相案件」と発言していたことが愛媛県文書で発覚した、柳瀬唯夫・元首相秘書官の答弁だ。
実際、柳瀬元首相秘書官も、中江前首相秘書官とまったく同じように、当初は加計学園関係者や今治市、愛媛県職員と面談していた事実を「記憶にない」と国会で答弁、その後、愛媛県文書が出てきたことによってその事実を認めるも、「政府の外の方からアポイントがあれば極力お会いするようにしていた」「加計学園の件につきまして、総理に対して報告したことも、指示を受けたことも一切ありません」と言い張った。
こんなバカな話があるだろうか。中江氏も柳瀬氏も、その業務は安倍首相の命を受けて政策の補佐や関係各所との調整を担うものだ。それなのに、このふたりは「安倍首相の指示はない」と強弁し、かたや柳瀬氏は誰彼構わず官邸に招いて親切丁寧にアドバイスをおこなったと言い募り、かたや中江氏も「個人的見解」「単独の意思」で統計調査の手法について何度も厚労省に介入していたと主張するのである。
これが事実だというのならば、首相秘書官は、仕えている総理をすっ飛ばして特定の法人に肩入れするわ、政策に口を出すわのスタンドプレーを連発する異常な特権集団というほかない。無論、そんなわけがあるまい。質疑に立っていた立憲民主党の小川淳也議員は「2015年ごろから、国有地の処分、学校法人の認可、統計制度の変更、すべてにおいて本来、職務権限がないはずの総理秘書官が暗躍しているケースが目立つようになった」「不透明な介入や政治的影響力を、責任もない権限もない人たちが事実上行使することは大問題」と指摘した。
だが、すると安倍首相は、さっそくこんな話をはじめたのだ。
「総理大臣秘書官というのは何の責任もない(なんて)そんなことありませんよ。総理大臣を支えるっていう、とっても大切な責任があるんですよ。その使命感のもとね、夜遅くまで働いてますよ。それがまったく責任がないかのごときの言動というのは驚くべき発言であって、民主党政権時代の秘書官ってみんなそんなつもりだったんですかね」