SKY-HI「アジアの音楽家も評価される時代に日本人だけがいない」
本来であれば相当に危機感を募らせるべき状況だが、しかし、現実はそうなっていない。どころか、日本の音楽業界はむしろ、外で起きていることから目を背け(そもそも始めから興味もない)、ひたすら内に内にこもることを選んだ。SKY-HIは前掲「ROCKIN’ON JAPAN」のインタビューでそのような状況を嘆いている。
「日本には『日本の音楽は日本の音楽。海外のものとは別だから日本独自のものをやるべきだ』っていう論調が根強くあるんですけど、それをずっとやってる内に何が起こったかというと、音楽家の影響力がどんどん失われていったんですよね。(中略)アジア系の音楽家も評価されるようになっている時代なのに、日本人だけがそこにいないというのは事実なんです」
こういった文化的鎖国は、社会的な閉塞感にもつながっていく。SKY-HIは「ELLE」日本版のウェブサイトのインタビューで「文化的な意味での閉塞感もそうだし、精神的な意味での息苦しさですよね。こうでなくちゃいけない、ああでなくちゃいけない。特に芸能界はそれで押しつぶされる人をよく見る」と語っているが、内向き指向の強化は、少しでも枠から外れる発言や思想を許容しない傾向を強めている。
その典型が、「音楽に政治をもちこむな」のフレーズに象徴されるような、芸能人の社会的発言をタブー視する傾向だろう。
SKY-HIは共謀罪成立までにとった安倍政権の強権的な姿勢を批判した楽曲「キョウボウザイ」を発表したり、韓国のラッパー・Reddyと共にヘイトスピーチを批判し多様性を賛美する「I Think, I Sing, I Say feat. Reddy」をリリースするなど、社会的なトピックに踏み込んだ楽曲を多くつくってきた。