自衛隊が抱える構造的問題、安倍政権でもっと自殺者が!
同書では防衛省が公開した自衛隊員の自殺死亡者数の一覧が掲載されている。それによれば、1994年から2003年にかけて、年間50人〜80人ほどで推移してきた自殺者数が、2004年から2006年までは100人となり、その後80人台となっている。
〈自衛隊の自殺率は一〇万人あたり三五人〜四〇人で、省庁のなかで突出して高い〉(同書より)
そして自衛隊員の自殺には必ず組織ぐるみの隠蔽がつきまとう。前述の「たちかぜ」事件ではイジメを行っていた2曹は懲戒解雇され、刑事事件でも立件されたが、自衛隊は自殺との因果関係さえ認めなかった。そのため両親が真相を求め国を提訴。だが自衛隊は自殺に関する内部アンケートを隠蔽するなどして、ようやく最高裁で国の責任が認められたのは2014年4月になってからだった。
ようするに、自衛隊という組織は裏でこういう事態を頻発させていたわけだ。そして、今回の「ときわ」でのイジメ自殺とその隠蔽。これはもはや、構造的な問題と言っていいだろう。
実際、建前上は軍隊ではないとされる自衛隊だが、その体質はむしろ悪名高き旧日本軍のそれを受け継いでいるといわれてきた。世界の軍隊の中でも桁外れに過酷といわれていた暴力支配。満州で関東軍が国民を見捨ていち早く逃亡したことに象徴されるような、上層部の無責任体質、自分たちの戦争犯罪の証拠をかたっぱしから焼き捨てた隠蔽体質。これらが、自衛隊のイジメ自殺や隠蔽を生んでいる部分があるのではないか。
しかも、こうした状況は安倍政権による安保法制成立で、今後、海外派兵など戦闘リスクを伴う任務が増大すれば、より拍車がかかることは確実だ。実際、「しんぶん赤旗」の調査によるとアフガニスタン、イラクの両戦争に派兵された自衛官の中で、自殺者が2014年3月末時点で少なくとも40人にものぼった。これは国民平均に比べ約3~16倍、自衛官全体と比べても約2~10倍だという。
防衛省は2016年、陸海空の幕僚監部服務室にパワハラホットラインを置くなどの再発防止策を打ち出した。しかし、こうした体質を温存させ、隠蔽を続けている限り、絶対にイジメや虐待、パワハラがなくなることはないだろう。
〈自衛隊は、内部から変わる事の出来ない組織です〉
先に紹介した『自衛隊員が泣いている』にはこんな一文が記されている。
(伊勢崎馨)
最終更新:2018.12.31 10:27