負の歴史をネグり明治の日本=大日本帝国を礼賛する安倍首相
言うまでもなく、明治の日本=大日本帝国は、天皇を神と崇め、国民は天皇のために命を捧げることを強制される絶対君主制国家だった。人権は著しく制限され、貧困者や女性の参政権も認められず、身分制も根幹は解消されないまま。富は財閥と大地主に集中し、庶民は徹底的に搾取された。また、対外的には帝国主義国家として、数々の侵略戦争を引き起こし、多くの国の人間の命と自由を奪った。しかも、この体制はその後、80年にわたって続き、「神国日本」というカルト的な思想によって日本自体も滅亡の危機に追い込んだ。
一方、安倍首相は今年の年頭所感でも「150年前、明治日本の新たな国創りは、植民地支配の波がアジアに押し寄せる、その大きな危機感と共に、スタートしました。国難とも呼ぶべき危機を克服するため、近代化を一気に推し進める」などと語ったように、明治の精神をこれからのモデルにしようと国民に呼びかけている。
侵略戦争や人権侵害などの負の歴史を完全にネグり、ひたすら明治を賞賛する安倍首相の思想が、皇室を国民支配のシステムとする復古的な国家観に根ざしていることは、本サイトでもたびたび指摘してきたとおり。安倍首相は政治力を総動員してこの明治礼賛プロジェクトを推し進めてきた。
たとえば、2015年には安倍首相のゴリ押しで、帝国主義の象徴でもある「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産に推薦、登録させた。ほかにも、安倍首相は側近の極右議員や日本会議と連動して、11月3日の「文化の日」を「明治の日」に変えようという祝日法改正運動を推し進めるなど、明治日本の復活キャンペーンをしきりに展開。官邸ホームページには「明治150年ポータルサイト」なるサイトが開設され、「明治150年」関連施策として実に100を超える事業がラインナップされた。そして、その安倍政権による明治回帰キャンペーンの集大成が、今回の「明治150年」政府式典だったのだ。
一方、今上天皇は戦争を経験し、戦後に即位した初の天皇として、この国の戦後民主主義とともに歩んできた存在だ。第二次安倍政権発足以降は、安倍政権による「戦争のできる国づくり」に警鐘をならすかのように、踏み込んだ護憲発言も行った。その今上天皇が、安倍首相の明治回帰キャンペーンに政治利用されることに強い警戒心を抱き、出席を拒否していたとしてもいささかも不思議ではない。