ブリーフ判事がSNS で発信するのは司法の密室化に風穴をあけるため
岡口裁判官は、9月5日に配信された共同通信への寄稿のなかで、このように述べている。
〈司法の本質は、多数決原理が支配する立法・行政によって侵害された少数者の権利を守ることです。多数意見、すなわち世論に逆らってまで少数者を保護する結論を出すには、よほどの裁判官としての自信と、深い教養が必要となります。
サラリーマン化した「忖度(そんたく)」裁判官にそのようなものはなく、代わりに世間の風を読んで結論を出し、もっともらしい理屈を付ける国語力があります。多数決原理で国民に決めてもらうというのでは、司法は要りません。しかし現実は、国民に原発について決めてもらうべきだと明言する高裁決定が現れる始末です。〉
〈そんな裁判官でも権威を保つ方法は、裁判官個人を徹底的に秘密のベールに包んでしまうことです。どんな人たちなのか分からなくすることで、権威の失墜を防いでいます。裁判官の素顔が表に出ては困るのです。〉
つまり、岡口裁判官は、こうした司法行政の密室主義や忖度裁判官の増殖に対抗するために、ああえて自らSNSで顔を出して市民目線で情報を発信しているのだ。そういう意味では、岡口裁判官の行動は裁判官の権威を失墜させるどころか、民主主義や司法の独立に大きく寄与しているともいえるだろう。
もちろん、一方では、裁判官がSNS上で裁判に関する発言をすることについては批判もあり、制限すべきという意見も少なくない。しかし、少なくとも、政権に批判的な論評で目をつけられて、当局から恣意的な懲戒処分が下されるようなことは、決してあってはならない。最後にそう強調しておきたい。
(編集部)
最終更新:2018.10.23 12:42