首相官邸HPより
どこまで行っても自分のことしか頭にないのか──。安倍首相は15日に全国戦没者追悼式に出席すると、夕方から別荘のある山梨県に出発。日本財団の笹川陽平会長の別荘に到着すると、森喜朗や小泉純一郎、麻生太郎といった首相経験者らと昨年につづき会食をおこない、翌16日には「富士桜カントリー倶楽部」で森、小泉、麻生のほか、加藤勝信厚労相や茂木敏充経産相、萩生田光一自民党幹事長といった側近らとゴルフを楽しんだ。
西日本豪雨の被災地では、この極暑のなか、いまなお多くの人びとが避難所生活を余儀なくされている。にもかかわらず、脳天気にゴルフに興じる総理──。しかも、記者の「調子はどうですか?」という問いかけに、「非常に良い」「気持ち良くやりましたよ、きょうは」とニッコリ。プレー中の映像でも、元気にハキハキと動いている。
安倍首相といえば、右足の股関節周囲炎と診断されたことを理由に、7月15日に予定されていた被災地である広島県の視察を取りやめた。しかし、診察を受ける前の写真では、なぜか左足の付け根のほうをポケットに入れた手で強く抑え、痛みを堪えた表情で歩いていたことから、「もしかして仮病?」とネット上でも話題に。それはさておいても、ゴルフは股関節にも負荷がかかるスポーツのはずだが……。
だが、問題にしたいのは「ゴルフを楽しんでけしからん」などというようなことではない。西日本豪雨の被災者に対する支援をめぐって、懸念されていた事態が起こっているというのに、国に対応する姿勢がまったく見えないことだ。
「被災者生活再建支援法」では、住宅が全壊した世帯に最大300万円が支給されるが、同法が適用されるには「10 世帯以上の住宅が全壊する被害が発生した市区町村」「100 世帯以上の住宅が全壊する被害が発生した都道府県」などといった基準が設けられている。つまり、この基準から外れてしまい、同じ住宅全壊でも支援が受けられる世帯と受けられない世帯が出てきているのだ。
実際、神戸新聞8月14日付けの報道によると、兵庫県では神戸市と宍粟市に同法が適用されたが、一方、淡路市で全壊と判定された世帯は、市内ではほかに全壊世帯がないために同法の支援外となったという。これはあまりに理不尽な問題だ。
そもそも、野党6党は今年3月、この「被災者生活再建支援法」の改正案を国会に提出。支援金の上限を300万円から500万円に引き上げることや、支給の範囲も現行の全壊世帯から半壊世帯への拡大を盛り込んでいた。
しかし、与党は西日本豪雨が発生して、喫緊の被災者支援策が求められるなかでも、この改正案を審議入りさせず、高度プロフェッショナル制度の創設を含む働き方改革関連法案やカジノ法案といった安倍首相ゴリ押しの法案を優先させ、挙げ句に強行採決に踏み切った。結果、被災者生活再建支援法改正案は棚ざらしとなっている。
だが、前述したように、同じように住宅の再建が必要なのに支援が受けられない世帯が出てきているのだ。これに対処するには、閉会中審査や臨時国会を開催し、すばやく国として法整備をおこなう必要がある。
にもかかわらず、安倍首相にそうした動きはまったく見られない。というよりも、公務そっちのけで総裁選対策にばかり時間を割いているのだ。