首相官邸HPより
平成で最悪となった西日本豪雨だが、安倍首相の初動対応への批判が止まらない。ついにはフランスの高級紙「ル・モンド」も、安倍首相の姿勢を疑問視し、2日間も放置しておいて「時間との戦い」と言い出したことを批判した本サイトの記事を紹介。同記事をリツイートした映画監督・想田和弘氏の〈首相はもはや自分が何をやっても主権者から罰せられないと感じているのだと思う〉というツイートを掲載した。
だが、国内に目を向けると、安倍首相の初動対応に批判をおこなっているのはほとんどがネットメディア。なかでも、十数万人に避難勧告が出されるなど警戒が高まっていた最中に安倍首相が総裁選を睨んで「赤坂自民亭」なる内輪の飲み会に参加していた問題を批判的に取り上げたのは、西日本新聞や静岡新聞、毎日新聞くらい。昔ならワイドショーがすぐに食いつきそうなネタだが、いまのところキー局で紹介したのはTBSの『Nスタ』『はやドキ!』『あさチャン!』くらいだ。
しかも、安倍首相が昨日になってようやく決めた外遊取りやめについても、多くのメディアは「豪雨対応を優先」「速やかに被災地域を訪れることも検討」などと報道。まるで安倍首相が英断したかのような伝え方だが、実際はネット上で初動対応に批判が高まっていたことから仕方なく決定しただけで、朝日新聞によれば〈首相官邸は最後まで実現を模索〉していたというのだから呆れ果てる。そもそも、与党の勝手で国会を延長しておいて緊急性のない長期外遊に出るという行動事態が異常で、実際に衆院議院運営委員会は安倍首相のこの出張を了承していなかったのだ。
こうしたメディアの弱腰に高を括ったのか、安倍政権はきょうも災害対応を疎かにし、被災地をないがしろにする行動に出た。被災地への対応に全力をあげるべき局面にも関わらず、安倍政権は内閣委員会の開催を強行、災害対応の先頭に立つべき石井啓一国土交通相を、なんと6時間も委員会に張り付かせるという信じがたい暴挙に出たのだ。
土砂崩れや浸水といった被害が相次いだのは6日午後〜7日未明のことで、きょうは生存率が急激に下がる「発生後72時間」を迎えた。しかも、今回の豪雨では交通インフラが直撃を受け、避難所に救援物資が届きにくいという問題も起きている。さらに、被災地では暑さが襲っており、避難所生活への不安も増している。人命救助、被害状況の把握、インフラの復旧、被災者支援、仮設住宅や公営住宅の確保──こうした指示を出すのは、石井国交相の重要な責務だ。
だからこそ、野党6党派は昨日、菅義偉官房長官に政府は豪雨災害対応に最優先で取り組むよう申し入れをおこない、安倍首相や石井国交相といった担当大臣が最優先で災害対応に当たることを求めた。だが、自民党は「6時間の質疑をおこないたい」とし、反発する野党を尻目に自民党の柘植芳文委員長の職権で委員会開催を強行したのである。
すぐさま対応するべき問題が山積し、その上、きょうも11時過ぎに広島県府中町の榎川が氾濫するなど、いまだに被害は拡大しつづけているというのに、安倍政権は会期末までにカジノ法案を成立したいがために、こんなタイミングでさえ審議を続行するとは……。
ようするに、安倍政権はこの非常事態に「災害対応よりもカジノ審議」を優先させたのだ。