高プロ法案が成立したらほとんどの人が“働かされ放題”に
しかも、いったん法律が成立してしまえば、その後に年収要件や対象職種は国会審議の必要ない省令等でいくらでも拡大できる。そもそも、裁量労働制拡大や高プロ導入は経済界の強い要望からなるものだが、経団連の榊原定征会長は2015年に「制度が適用される範囲をできるだけ広げていってほしい」と語っていた。また同年には、当時の塩崎恭久厚労相が経済界の会合で「(法案は)小さく産んで大きく育てる。とりあえず通すことだ」などと述べている。
もともと限定的業種のみを対象にしていたはずの労働者派遣法がいまではほとんどの業種に拡大適用されたように、このまま働き方改革法案が通れば、いずれはすべての人が“働かされ放題”になるのは火を見るよりも明らかだ。
他にも、この一括法案では高プロだけでなく、「時間外労働の上限規制」も問題視されている。一見、残業の時間を法規制するというのは労働者を守るように思えるが、実際の法案では、繁盛期の上限は「月100時間」とされており、これは労災認定の目安になる過労死ラインと同じだ。ようするに、この法案には労働者の目線が一欠片もなく、完全に使用者側=経済界の利益だけを追及する内容になっているのである。
こうした欠陥だらけの高プロと上限規制を中心とする働き方改革法案に対しては、野党だけでなく、家族を過労で亡くした遺族たちも強く反対の声をあげている。過労死遺族の人たちでつくる「全国過労死を考える家族の会」は、昨日、官邸前で法案に反対する座り込みの抗議をおこなった。「過労死を考える家族の会」は安倍首相に面会を求めてきたが、いまだに返答はないという。
衆院厚労委員会の参考人招致では、同会の代表世話人であり、自身も夫を過労自殺で亡くしている寺西笑子さんが、このように訴えた。
「そもそも働き方改革の関連法法案は、安倍総理大臣が委員長になり、政府主導で推し進めてきたものです。(中略)先進国日本と言われている、その政府の先頭に立っている方が、まさか命に関わる法案を、丁寧な審議をせず、過労死遺族の声を聞かず、教訓を学ぼうとしない。世論の大半が反対している法案を強行採決するという暴挙は、やめてください」
安倍政権が謳う「働き方改革」とは、経済界だけに尻尾を振って、人々を過労死させる“働かせ方”に突き進むものだ。こんな法案は決して通させてはならない。野党は何が何でも強行採決を阻止するべきだ。
(編集部)
最終更新:2018.05.23 07:04