自衛隊統合幕僚長が安倍首相の9条加憲案に「ありがたい」と発言
しかし、より注目すべきは、「国民の会」の署名運動は、9条への自衛隊明記や緊急事態条項新設など安倍首相が進める改憲内容に同調しており、深い協力関係にあることだろう。
安倍首相は何度も同会の集会にメッセージを寄せている。たとえば、今回の隊友会による署名集めの呼びかけが判明した2015年には、11月に同会主催の「今こそ憲法改正を!1万人大会」にビデオメッセージを寄せ、「憲法改正に向けて渡っていく橋は整備された」などと明言。本サイトも同集会を取材したが、当日の会場のアナウンスによれば、安倍首相は本来、会場入りして生演説を行う予定だったという。
また、2017年の憲法記念日に、安倍首相がビデオメッセージで「9条に自衛隊明記」の方針をいちはやく示した集会も、この「国民の会」主催の集会だった。安倍首相は同会の名前を挙げて「こうした取組みが不可欠であり、大変心強く感じております」と謝辞も述べている。また、今年の5月3日にも同じ改憲集会にメッセージを寄せ、意気込みを語っていた。
なお、安倍首相が9 条への自衛隊明記を明言した後の2017年5月23日には、河野克俊統合幕僚長が記者会見で、「一自衛官として申し上げるなら、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されることになれば、非常にありがたいと思う」と、安倍改憲への賛同を示した。自衛隊制服組トップとしてあるまじき政治的行為であり問題になったが、菅義偉官房長官が「個人の見解。まったく問題ない」と述べ、内閣は「政治的行為には該当しない」とする答弁書を閣議決定するなど、まったくの不問にしている。
いずれにしても、安倍政権と歩調を合わせた改憲署名への協力にせよ、暴言三佐へのあまりに軽い処分にせよ、これらは、現在の自衛隊をめぐる危険な方向性を決定的にしていると言えるだろう。
いまや、自衛隊という組織には“安倍首相の私兵”“安倍政権のための軍隊”という意識が浸透している。また、防衛省の日報隠蔽問題をみても、安倍政権をかばうために、平気で国民を欺き、不正を働くようになっており、しかも、安倍政権に逆らわなければ、どんな不正であっても、自衛隊法を逸脱しようとも、厳しい処分は下されない。そして、小西氏への暴言事件に現れたように、「安倍サマの敵」とみなしたものは平気で攻撃し、それが事実上許されてしまう。
安倍政権のもと、こんな歪で危険きわまりない状況が、紛れもない実力組織で起こっている。近い将来、改憲に反対する市民のデモ隊を“安倍首相の私兵”と化した自衛隊が鎮圧する、そうした独裁国家のような光景が広がったとしても何ら不思議はないのだ。国民はこの現実を直視すべきではないか。
(編集部)
最終更新:2018.05.09 09:49