加藤厚労相はそれでも「調査は適切」といいはり法案を撤回せず
データを捏造した上に資料の隠蔽……。だが、信じがたいことに、厚労省の山越敬一労働基準局長は「異なる数値で比較したことは不適切だったが、裁量労働での数値、一般労働での数値はそれぞれ適正に作成されている。それが労働政策審議会に提出され議論されているため、特段の瑕疵はない」などと答弁。
さらに、加藤勝信厚労相も、「それぞれ違う選び方をした資料を比較したことは不適切だったが、それぞれの調査は不適切だったわけではない」と述べ、「労政審ではさまざまな視点に立って議論いただくなかで『おおむね妥当』という答申をいただいた。いま、それを踏まえて法案の作成作業を進めている」と答弁。また、菅義偉官房長官も、きょうの定例記者会見で「今国会での法案提出と成立の方針はまったく変わりない」と断言したのである。
これだけの捏造が発覚したというのに、労政審のやり直しはおろか、まだ今国会で法案は提出するというのだ。国民を舐めているとしか言いようがないだろう。
今回のデータ捏造にかんしては、官邸が主導して恣意的なデータを厚労省に出させたのではないかという疑惑もあるが、安倍首相が捏造データをもち出して答弁をおこなった事実が指し示すのは、いかに安倍政権が国民の命を軽視しているかという問題だ。
安倍首相は「働き方改革関連法案」について「多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する」ためなどと言うが、この裁量労働制の対象拡大しかり、同法案に含まれる高度プロフェッショナル制度しかり、残業代ゼロで何時間でも働かせることができる法案であり、長時間労働によって引き起こされている過労死をいま以上に増やす可能性の高いものだ。
しかも、長時間労働に罰則つきの規制を設けることで、あたかも是正に取り組んでいるかのようなポーズを取っているが、この法案では、時間外労働の上限規制を過労死ラインの月80時間を超える「月最大100時間未満」としている。このまま法案が通れば、あらゆる面で、現状よりも長時間労働を助長することは間違いないのだ。
22日に開かれる衆院予算委では、安倍首相出席のもとでこの法案をテーマに集中審議がおこなわれる予定だが、捏造されたデータをもとにしたような法案が通ることがあっていいはずがない。安倍首相本人の答弁、および歴代担当大臣が捏造されたデータを根拠にして答弁をしてきたことを含め、安倍首相の責任が徹底して問われるべきだ。
(編集部)
最終更新:2018.02.19 09:09