少女像を合意に含め、カネで慰安婦問題を封印しようとした日韓両政府
しかも、最悪なのは、この合意のなかに、在韓国日本大使館前の少女像をめぐる項目があり、韓国政府が「関連団体との協議を行う等を通じて,適切に解決されるよう努力する」と表明していたことだ。
安倍政権や日本のマスコミは少女像をさも“反日の象徴”“日本への嫌がらせ”のように扱っているが、これは彫刻家によるれっきとした美術作品=表現芸術で、その資金は市民による募金である。民主主義国家ならば当然尊重すべき、国民の「表現の自由」の範疇だ。
少女像の制作者である彫刻家キム・ソギョン氏とキム・ウンソン氏夫妻は、日韓の慰安婦問題だけに取り組んでいるのではなく、ベトナム戦争時の韓国軍による民間人虐殺の加害意識も正面から受け止め、謝罪と反省の意味を込めた「ベトナムのピエタ像」の制作も行なっている。つまり、少女像は決して“反日の象徴”ではなく、正式名称の「平和の碑」の名のとおり、戦争を憎み、犠牲者を悼み、世界の平和を希求する思いが込められているのだ。
たとえば、同じように平和の象徴である広島の「原爆の子の像」(禎子像)について、原爆を投下したアメリカが「10億円を出すから像を撤去しろ」などと言って日本政府が「解決」を約束したら、わたしたちはどう思うだろうか。「なんでそんなことを勝手に決められなければならないのだ」と激怒するはずだ。
ところが、日韓両政府はこの表現の自由への侵害、平和を思う人々の内心を圧殺する条件を約束してしまったのだ。
こんな内容の合意について、韓国国民が「合意見直し」の声をあげ、文在寅大統領がそれに応えようとするのは、民主主義国家の代表としては当然の姿勢ではないか。
だが、安倍政権と日本のマスコミは、そうした問題の本質を一切無視して、韓国政府の見直しの動きを「約束違反」などとヒステリックに攻撃するばかりだ。
それは、今回だけではない。日本政府やマスコミはこの間もずっと同じような攻撃を韓国に行なってきた。少女像が撤去されないことについて、「契約不履行」だと糾弾。昨年末、韓国の市民団体が釜山に新たな少女像を設置すると、駐韓大使の一時引き上げや日韓通貨スワップ協議の中断などの対抗措置を断行。露骨に韓国政府に圧力をかけてきた。
しかし、韓国側の慰安婦問題に対する強硬姿勢はむしろ、安倍首相の歴史修正主義が招いたものだ。