「天皇陛下が安倍首相に恨み骨髄」の記述には抗議しなかった宮内庁
さらに両者の溝が深くなったのは、女性宮家や生前退位をめぐる問題だった、以前から天皇サイドが水面下で検討を要望していたにもかかわらず、官邸は無視。その結果、天皇は「おことば」で国民に直接語りかけるという行動に出るのだが、天皇の表明後も官邸は、当時の風岡典之長官を事実上、更迭。次長に子飼いの内閣危機管理監だった西村泰彦氏をあてて牽制する報復人事に出た。
国民世論におされてしぶしぶ生前退位だけは認める方向に転換したものの、政府有識者会議やヒアリングには、安倍首相直々の指名で“生前退位反対派”の日本会議系メンバーを複数送り込み、制度化を望む天皇の希望を無視し「一代限り」としてしまった。
しかも、この有識者会議のヒアリングでは、安倍首相が人選した平川祐弘・東京大学名誉教授が「ご自分で定義された天皇の役割、拡大された役割を絶対的条件にして、それを果たせないから退位したいというのは、ちょっとおかしいのではないか」と天皇を批判する始末だった。
客観的に見ても嫌がらせとしかみえないが、こうした安倍官邸の仕打ちを天皇がどう受け取ったのかは、明らかだろう。事実、今年の5月21日には、毎日新聞が生前退位関連法について、天皇が「一代限りでは自分のわがままと思われるのでよくない。制度化でなければならない」「自分の意志が曲げられるとは思っていなかった」などと語っていたとすっぱ抜いていた(ちなみこの記事に対して宮内庁は抗議文書を送付しておらず、HPにも抗議を掲載していない)。
そして、今回の「週刊新潮」による事実とはまったくちがう「官邸関係者の打明け話」。天皇が怒り心頭に発したとしても不思議はない。
いや、そんなまどっろこしい言い方はやめよう。天皇が安倍官邸に激怒していることには、もっと決定的な証拠がある。それは「天皇陛下がパレードを望んでいる」という官邸関係者のコメントにあれだけ強く抗議した宮内庁が、そのコメントが載った「新潮」のタイトルと記事のメイン部分には一言も抗議していないという事実だ。
改めて書いておくと、「新潮」記事のタイトルは、「「安倍官邸」に御恨み骨髄「天皇陛下」」。記事には、侍従職関係者によるこんなコメントが掲載されていた。
「陛下は喜怒哀楽の感情を表に出すことを決してされないのですが、それでも安倍さんには御恨み骨髄、という表現がぴったりくるのではないでしょうか。これだけ陛下の思いをないがしろにした首相は前代未聞だと言えます」
(編集部)
最終更新:2017.12.18 11:34