共謀罪、沖縄基地問題にも批判の声をあげた佐野元春
佐野が抵抗の姿勢を向けている相手はドナルド・トランプだけではない。安倍首相にたいしても、佐野は再三にわたって踏み込んだ発言をしている。
先月28日、佐野は広島市内で行われたイベントの壇上にて、ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)について触れ、「もし核廃絶という目標を本気で持っているならば、日本のリーダーがお祝いのコメントを発信してほしい」(2017年10月28日付朝日新聞デジタル)と語っている。
周知の通り、安倍首相はICANのノーベル平和賞受賞について一言もコメントしていない。ノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家のカズオ・イシグロ氏に対してはお祝いのコメントを即座に送っている一方、NGO「ピースボート」共同代表の川崎哲氏をはじめ、日本の団体や市民運動家が多く関わってきた組織の偉業はなかったことにしたのだ。
どう考えても整合性のとれていない安倍首相の対応だが、その裏に、首相やその周囲の人々が抱く核兵器保有への黒い野望があることは誰の目にも明らかである。そんな状況に対し、佐野ははっきりと異議申し立てをしたのだ。
また、今年の5月17日、共謀罪が衆院法務委員会で強行採決される見通しが強まってきた時期には、自身の公式Facebookアカウントにこのような詩を投稿している。その詩のなかで佐野は、このまま共謀罪が成立してしまうことに対する警鐘を鳴らし、治安維持法を再びつくろうとしている為政者への怒りを綴った。
〈政府が進めている「共謀罪」に危険なシルシが見える
スーザン・ソンタグは言った
「検閲を警戒すること、しかし忘れないこと」
アーティストにとって、検閲は地雷だ
表現が規制されることほどきついことはない
政府は言う
普通の人には関係ない
しかし判断するのは権力を持つ者、警察だ
ダメと言われたらそれでアウト
戦前の治安維持法と似ている〉
また、15年5月7日には、沖縄県辺野古の大浦湾に赴いたときの所感をFacebookに綴り、「境界線」という短いスケッチを書いている。そのなかでは、アメリカ基地問題で苦しめられている沖縄の人々への思いと、その苦しみをさらに増幅させようとしている安倍首相への怒りが込められていた。
〈米軍基地問題で、
また、この地が引き裂かれている。
本来絆で結ばれているはずのこの地。
誰がその絆を壊しているのか。
なぜその絆が引き裂かれなければならないのか。
リーダーが息をするたびに目を凝らす。
どんなリーダーも信じない。〉