「改憲は拉致被害解決のため!」被害者救出が目的のはずなのに、なぜか安倍礼賛団体に…
元幹部A 私たちは拉致問題、そして尖閣問題などを通じ、右派運動に興味をもち、活動を始めました。もともと右翼的な考えをもっていたこともありますし、署名活動など熱心に活動してきました。しかし、次第におかしいと思ってきたのです。あまりにその考え方や行動が偏っていき、ついていけなくなった。その大きな要因のひとつに、安倍首相に対する「強すぎる信仰」があります。
元幹部B 小泉訪朝、そして5人の拉致被害者の奪還からどんどん年月が経ち、その間には民主党政権もあり、私たちの間でも焦りがありました。そして2012年、第二次安倍政権が発足します。これは大きかった。まさに拉致問題の旗手、「真打登場」ですからね。期待は膨らみました。そして2014年には日朝協議が再開され、ストックホルム合意……。この際、拉致被害者が何人か帰国するというのが決定事項のように語られていましたし、特別調査委員会もでき、安倍政権は「拉致は最優先事項」とまで言い切っていた。マスコミもこれを大きく取り上げ、再び拉致問題に大きな関心が寄せられたこともあり、みな“安倍さん万歳”状態でした。
しかしその後はどうなったか。北朝鮮からの報告書は一向に出ない、拉致被害者も一人も帰国はしない。時が経つにつれうやむやになり、2016年2月には北朝鮮から拉致の再調査をおこなう「特別調査委員会」の解体が発表された。結局、何の成果もなかったし、時間だけが経過し、すべては振り出しに戻っただけです。
加えて、安倍首相は最近では北朝鮮のミサイル危機に乗じて「対話ではなく圧力」などと言って交渉すら放棄しています。それなのに「救う会」は抗議するどころか、早い段階から「報告書など受け取るな」と、交渉の失敗をごまかすためのアシストをして、逆に安倍首相礼賛の姿勢を強めていったのです。何か疑問を口にすると「安倍さんの足を引っ張るのか」「安倍さんに迷惑をかけることなど絶対にするな、言うな」と言われて、黙るしかない。
元幹部A 第二次安倍政権成立後の、政府と「救う会」、「家族会」の言動は、拉致被害者救出活動とはとても呼べるものではなく、自民党の下部組織の極右活動以外の何ものでもありませんでした。安倍首相への露骨な応援と追随です。
たとえば憲法改正です。「救う会」や「家族会」では“拉致問題は憲法改正をしないと解決できない”というのが支配的な論調になっています。安倍首相は15年に安保法制を可決・成立させ、さらに憲法改正を目指していますが、「救う会」は「安倍首相の改憲の目的は、自衛隊を派兵して拉致被害者を救出するためだ」と大真面目に語る。
でも、そんな馬鹿なことはない。もし本当の保守思想の持ち主なら、口だけで何もしない安倍首相を批判し、「具体的に動いてくれ、被害者を本気で救ってくれ」と抗議すべきなのに、それもしない。さらに、もし本当に戦争になったら、拉致被害者も巻き添えになる確率も高い。なのに、そんな矛盾や疑問さえ口に出せない雰囲気がある。現実から乖離し、戦争や圧力など勇ましい言葉を叫ぶだけで思考停止しているのです。繰り返しますが、その背景にあるのは安倍首相への盲信です。