オバマの「核の先制不使用宣言」に反対姿勢を示していた安倍政権
周知のとおり、オバマは就任間もなくして、プラハ演説で「核兵器なき世界」の理念を掲げ、ノーベル平和賞を受賞したが、その後は幾多の壁にぶつかり、核軍縮はうまくいかなかった。そのオバマが、任期終了までとしてこだわったのが「核の先制不使用宣言」である。これは、核攻撃を受けないかぎりは先に核兵器を使用しないとするもので、オバマにとって強く期するところがあった。
ところが現実には、昨年秋に断念へと追い込まれた。日本のメディアは米国内での反発に屈したと報じていたが、実はこの間、安倍政権はオバマの悲願である「核の先制不使用宣言」を潰しにかかっていたのだ。
すっぱ抜いたのは、米紙ワシントン・ポスト。昨年8月15日の報道で、安倍首相がオバマが検討している「核の先制不使用」政策についてハリス米太平洋軍司令官に反対姿勢を示したと伝えたのである。
〈もしもオバマが核の「先制不使用」を宣言したら、北朝鮮のような国に対する抑止力が損なわれ紛争のリスクが高まると、日本は信じている。2人の政府官僚によると、日本の安倍晋三首相は、このメッセージを最近ハリス太平洋司令官に直接、伝えた。〉(ワシントン・ポストより。編集部訳)
この米有力紙報道を日本の国内メディアも報じ、波紋が広がったのだが、その数日後、安倍首相は「ハリス司令官との間において米の核の先制不使用についてのやりとりは全くない。どうしてこういう報道になったか分からない」と、ワシントンポストの報道を全否定。しかし実のところ、安倍首相が7月26日にハリス司令官と会談して反対の意志を伝えたことは、日本の官邸、外務省関係者も一部のメディアにオフレコで認めていたことだ。