マスコミの開示請求の動きを総務省が菅官房長官に密告
前述のとおり、菅官房長官は大臣秘書官を通じて、各閣僚側に〈20日までの期日を、30日まで必ず延長してください〉と指示していた。実は、この公開の延長は政治資金規正法の規則で〈事務処理上の困難その他正当な理由があるとき〉に限り認められるもの。だが、常識的に考えて〈事務処理上の困難〉等は、各事務所によって事情が異なるはず。にもかかわらず、一律に公開延長を指示していたということは、その理由を捏造していたことになり、明らかに同法違反にあたるだろう。
しかも「文春」によれば、菅官房長官側から指示を受けた下村元文科省側は、日報に、こうも記していたという。
〈これを、また一律に取りまとめているという事がばれたら面倒なので、この連絡は厳秘! 内容について、困ったらA(日報では実名)先生にすぐ相談のこと〉
この記述をみるに、菅官房長官が閣僚全員に指示を出していたことは間違いないが、「ばれたら面倒」というのは、まさに指示を受けた事務所側もその違法性を認識していた証左ではないのか。
また、記事でも指摘されているが、この“隠蔽”指示の日報が書かれた2014年10月といえば、小渕優子経産相(当時)が違法献金問題で大臣辞任に追い込まれ、また、その直後に安倍首相が消費増税延期を公表し解散を決断するという時期。つまり、菅官房長官は「政治と金」の問題に国民の目を向けさせないよう、不適切な支出がてんこ盛りな閣僚たちの少額領収書の開示を引き延ばそうと画策したのだろう。
なんとも姑息としか言いようがないが、問題はまだある。それは、なぜ菅官房長官が閣僚に対する少額領収書の開示請求の全容を、ここまで把握できていたのか、という問題だ。
先に述べた通り、開示請求は総務大臣や各地域の選管に対して行われ、法令に基づき10日後に各政治団体の会計責任者に伝達される。ところが、下村事務所の内部文書では〈一昨日マスコミから総務省に開示要求が入りました〉と、正式な総務省からの提出命令よりも先に、しかも請求が「マスコミから」だという情報が完全に漏れているのだ。
「文春」でも政治資金規正法に詳しい上脇博之・神戸学院大学教授が「菅氏はなぜこの時、開示請求があったことや請求者が〈マスコミ〉と把握していたのか。もし総務省が菅氏に漏らしていたとすれば、大問題です」と指摘しているが、その通りだ。