東山紀之『カワサキ・キッド』(朝日新聞出版)
今年10月より、テレビ朝日にて日曜朝5時50分から2時間40分にわたって生放送されるニュース番組『サンデーLIVE』(番組名は仮タイトル)のキャスターを東山紀之が務めると発表された。
ニュース情報番組のキャスターを務めるのは、彼にとっては初めての試みとなり、「昔よりも『社会の情勢を知りたい』という欲求が強くなっている。と同時に『伝えること』も年長者の役割なんじゃないか、と感じる日々。そんな時にいただいたチャンス。放送に向けて週1回の勉強会もありますし、とても楽しみ」(7月3日付スポーツ報知)と意気込みを語っている。
日曜午前中のニュース番組といえば、『サンデーLIVE』と時間は被らないものの、『ワイドナショー』(フジテレビ)が思い浮かぶ。本サイトでもしばしば指摘している通り、『ワイドナショー』は、松本人志のネトウヨ気質がモロに出た醜悪な政権忖度情報番組と化しているが、東山が担当するニュース番組は、そういったものとは一線を画す内容になるのかもしれない。
というのも、東山は保守化の進んだ現在の日本社会を跋扈する、差別やヘイトに対し、一貫して反対の姿勢をとっているからだ。
そういった考えの背景には、東山の出自と生い立ちが関係している。彼は2010年に『カワサキ・キッド』(朝日新聞出版)という自伝エッセイ集を出版。そこでは、神奈川県川崎市で育った極貧の少年時代や、祖父がロシア人という出自など、それまで明かされなかった数々の秘話が告白されていた。
そのなかでも、とりわけ象徴的に語られているエピソードが、彼が3歳のとき両親が離婚し、生まれて間もない妹とともに母子3人で移り住んだ川崎・桜本での思い出だ。
「僕たちの住む地域には在日韓国・朝鮮人の人々が多く暮らしていた。うちのアパートもそんなコリアン・タウンの一角にあった。
近所には、日本名を名乗り、焼き肉屋を営む朝鮮人母子が暮らしており、僕より二つ上のおにいちゃんがいた。」
「僕と妹が毎日、お宅にあがり込むと、おばちゃんはいつも店の豚足を食べさせてくれる。僕たちはそれにかぶりついた。貧しくてお腹をすかせていた僕たちは、あのころ、あの方々がいなかったら、どうなっていただろうと思う」