安倍政権の態度はリットン調査団に抗議した戦前日本と同じ
実際、国際社会の要請を無視したこの安倍政権の態度については、専門家の間でも危惧が広がっておる。日本近代史を専門とする加藤陽子・東京大学教授も〈1931年の満州事変後、リットン卿が国際連盟の委嘱で報告書を発表した「リットン調査団」。その時の抗議と似ています〉と指摘し、〈共通するのは「偽りの夢」と、国民の「人気」です〉と述べている(朝日新聞6月6日付)。
〈満州事変当時は世界不況。日本の農村も苦しんでいたが、政党内閣には、人口の4割を占める農民を救えなかった。ビジョンを掲げたのが軍部でした。「満州が手に入れば好景気になる」とあおり、国民人気を獲得します。いざ戦争になれば、搾取され徴兵されるのは農民でしたが。
「見果てぬ夢」を掲げて後戻りできなくなったところで、国際連盟の指摘に過剰反応。今と似ていませんか。「五輪で景気が良くなる」と「見果てぬ夢」で国民を期待させ「『共謀罪』でテロを防がなければ開催できない」とあおる。法案成立直前までこぎ着けたのに、国連特別報告者からの「待った」に怒り狂ってしまった。〉
1931年からの満州事変では、関東軍は南満州鉄道の爆破事件を中国軍の犯行と発表した。これを発端に関東軍は武力で占領し「満州国」を建設したのだが、実は鉄道爆破は関東軍の自作自演だった。国際連合は満州事変の調査のためにリットン調査団を派遣。その報告書では満州事変を日本の自衛とは認めなかった一方、満州における日本の権益を尊重するなどの配慮もあった。ところが日本は国連の勧告に反発して脱退。国際社会での孤立を深め、未曾有の敗戦へと突き進んでいった。
いま、わたしたちに必要なのは、安倍政権が振りまく嘘や幼稚な逆ギレに踊らされない冷静さだ。国際社会の懸念に視野を広げ、政府にとっての「不都合な真実」を直視しなければならない。加藤教授は1925年の治安維持法がリベラルな加藤高明内閣で成立したことを例に、〈極めて脆弱な法律を、安定した力を持つ政党内閣が自信満々に作ってしまったという怖さ。このおごりを忘れてはいけません〉と念を押している。この共謀罪のもとで歴史が繰り返さない保証はどこにもないのだ。
(編集部)
最終更新:2017.12.05 01:13