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岡山大・津田敏秀教授が「甲状腺がん多発は原発被曝と関係ない」派に反論

福島の甲状腺がん多発、行政や医療関係者の「原発事故と関係ない」の主張はデータを無視したデタラメだ

──福島県の有識者会議「県民健康調査」検討委員会は、甲状腺がん増加を放射線の影響や因果関係と考えにくい理由として、“チェルノブイリ事故後に甲状腺がんが多発したのは事故から5年後だが福島ではがん発見が1年から4年と早い”ということもあげていますが。

津田 それは間違いです。なぜなら事故の翌年からベラルーシでもウクライナでもロシアでも多発し始めているからです。それはデータやグラフを見ても明らかで、翌年から増えているのです。たとえばベラルーシ国立甲状腺がんセンターの統計でも、少なくとも翌年から増えている。3年以内に甲状腺がんの過剰な症例が観察されたことを示すチェルノブイリのデータもある。しかし、そうした事実を検討委員会などは無視している。ちゃんとデータを真面目に見ていないからそうなるんです。こういう深刻な問題は見たくないデータでもちゃんと見ないといけない。第二次大戦時の日本もそうですが、見たくないデータを見ないと、取り返しのつかないことになってしまう。粉飾決算を繰り返した挙句、経営破綻する企業と同じことになってしまう。とくに今回のケースでは、子どもたちの健康がかかっているんです。私たちも甲状腺がんが増えて欲しくないけれど、きちんと見るべきは見て意見を言わないといけない。2011年以前から、巨大地震が既存のいかなる護岸壁よりずっと高い津波を引き起こす可能性は、東京電力もデータとして認識していた。しかしそうしたデータを無視したからこそ、原発事故が起こり、健康被害が起こっていることを忘れてはいけません。

──同じく検討委員会はチェルノブイリ事故後の甲状腺がん多発は5歳以下だが、福島では事故当時5歳児以下の発見がないと主張してきました(ただし、2016年6月に原発事故当時5歳の子ども1名に甲状腺がんあるいはその疑いがあると判明)。

津田 5歳以下が多かったというのは、チェルノブイリ事故14年後までの合計において“事故時に5歳以下が多かった”ということです。つまり、事故当時5歳以下だった子どもが、その後8 、9、10年が経って発症し、発症時年齢としては10代後半が多く発症しているんです。福島は事故からまだ6年。現時点で5歳以下の発症がないと言っても何の意味などありません。これから数年待たないといけない。実際、チェルノブイリでは、事故当時5歳以下の子どものがんが多発した時期は事故から12〜14年後です。これはグラフとして示されています。福島でも、今後10年で増えると危惧されるということです。

──ふくしま国際医療科学センター・放射線医学県民健康管理センターの高橋秀人教授らは、津田先生の解析が、原発事故が起きる前に、がん検診で発見できるまでに進展した甲状腺がんが存在した可能性を無視している、と言っています。つまり、先生の研究が「4年で全てのがんが臨床症状で発見されるまでに成長する」(潜伏期間が4年)というありえない仮定に立っている、と。

津田 そんな仮定は私は論文に書いていないし、言ってもいない。私たちが言っているのは、平均潜伏期間に関してです。「平均4年」と言っていることと「発見された全てのがんが4年で成長した」と言っていることとが異なることは、中学生でもわかります。論文では、事故前から発症もしくはある程度がんを持っている人が混入していることを前提としているし、それは論文にも書いてあることです。彼は私どもの論文を読めていないし、読むための基礎知識がないということでしょう。またアメリカ科学アカデミー(NAS)の報告では小児甲状腺がんの最短潜伏期間は1年です。そもそも、すでに述べましたように、チェルノブイリでの観察でも事故の翌年から増えています。また高橋氏の言う「4年という仮定」に関して言えば、平均潜伏期間が4年でなくても、10年でも、20年でも、数十年でも、結論は変わらないのです。やはり多発です。私たちは1年から100年まで有病期間の長さを仮定しましたが、やはり多発でした。平均潜伏期間が100年というのは現実の人間ではあり得ません。従って、ちょっとふざけすぎていると思われたらいけないので、論文では20年までとしましたが、結論は変わりません。それだけ激しい多発が起こっているのです。高橋氏がご自分でデータを確かめておられないことが、この点でも分かります。
 高橋氏からの反論については、今度岩波書店の「科学」などで詳細に論考する予定です。彼が医師国家試験にも出てくるような疫学理論について無知なのか、明らかにしていくつもりです。時間があるときに岡山に来ていただければ、詳細にご説明しますよ。

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