首相官邸ホームページより
日米首脳会談を「満額回答」などと大喜びして見せていた日本政府だが、さっそく内実が明らかになってきた。じつは、アメリカ側は共同声明の作成時に「日米自由貿易協定(FTA)の締結を目指す」という文言を入れろと要求していたというのだ。
安倍首相は14日の衆院予算委員会で「しつこいぐらいTPPの意義を話したので、その意味を理解してもらえた」などと言ったが、それ見たことか。尖閣諸島が日米安保の対日防衛義務の対象だと明記させることに躍起だった安倍首相だが、それと引き換えにFTAにまで踏み込まれていたというわけだ。日米首脳会談の成功を印象付けたい日本政府側はなんとか「2国間の枠組みに関して議論を行う」という曖昧な言葉で決着させ、この事実を国民に伏せていたが、すでに日本はアメリカにFTA締結へのレールを敷かれている状態なのである。
しかも、このFTAは、「国の主権をアメリカに差し出す行為」と猛批判を受けてきたTPPよりももっと日本に大打撃を与えることが確実と言われる“危なすぎる”シロモノだ。
そもそも、トランプが選挙中からTPPからの離脱を宣言し実行したのは、TPPよりも2国間協定のほうがより強く「アメリカ・ファースト」を押し付けることができるからだ。たとえば、このFTA問題を特集した「週刊プレイボーイ」(集英社)2017年2月20日号の記事によると、日本政府がTPP合意の際に「聖域を守った」とした農産品・畜産分野でも、アメリカはFTAによってその「わずかな成果」さえ奪いにくると指摘。TPP問題に取り組んできたPARC(アジア太平洋資料センター)の内田聖子氏は、同誌にこうコメントしている。
「これまでのTPPの合意内容でも、日本には深刻な影響がありました。そこからさらにアメリカの要求をのめば、日本の農業と畜産業は壊滅的な状況に追い込まれてします。しかしそれこそが、トランプ政権にとっての『TPP離脱の素晴らしい成果』なのです」