さらに表現教育に重きを置いているところも特徴的で、音楽は中学から高校まで6年間必修、美術でも一般的な絵画の授業のみならず、大工や染織といった分野を選ぶこともできる。卒業生にクリエイティブな職種の人が多いのも、こういったところに理由があるのだろう。
ただ、星野源は同じ埼玉県出身とはいえども、川口市の出身で飯能市とはかなり距離がある。片道2時間もかけて通学していたらしいが、それでも自由の森を選んだのには、こんな理由があった。
「すごく内気な子供だったんです。小学校のときに内気すぎて、親が、「これで普通の公立中学に行ったら、いじめられるかもしれない」と心配したんですね。小学校のとき、若干ちょっといじめもあったので、それで神経性の腹痛によく罹って、通学路の途中までしか行けない、みたいになっていたんです。
一時期は毎朝、途中にあるスーパーのトイレに寄ってから行く、みたいなのが日課で。それで遅刻が多かったので、これで公立はやばいぞ、ということで、親が見つけてきてくれたのが自由の森だったんです。ここなら遅刻しても大丈夫だという」
「遅刻しても大丈夫な学校」という理由はなかなか突飛だが、一方で、学校の教育方針に惹かれて入学を決める人もいる。“ハマケン”こと浜野謙太は神奈川県の実家を出て寮生活をしてまで自由の森に通った。その理由をウェブサイト「CONTRAST」のインタビューでこのように語っている。
「自由の森学園はアンチ序列教育の人たちが集まるんです。「今の学校のシステムはおかしいんじゃないか?」っていうポリシーを持った子どもたちが集まって、自分たちが思う学校像を作る学校というか(中略)幼なじみの女の子がいるんですけど、その子が自由な校風の学校を受けるって話してくれて。社交辞令で「面白そうだね。今度、資料とか見せてよ」なんて言ったら、住んでた団地でその子のお母さんはカリスマ的なお母さんで、それがウチのお母さんの耳にも入って。「謙太は序列教育へのアンチテーゼを掲げる高校に入りたい意志を持っている。親としては大学に進学してほしいけど、ここは謙太の意志を汲み取って、その学校に行かせてみよう」なんていう話になってて、親に火が点いちゃったんですよ(笑)」
偏差値と有名大学進学率ではなく、アンチ序列教育・自由な校風を重視する。そういう学校の選び方があることは子どもの選択肢の幅を広げることにつながると思うが、他方で保守メディアからは「生徒の管理がなっていない」「校内でタバコが黙認されている」「無断遅刻や無断欠席がまかり通っている」などとバッシング対象にもされてきたのも事実だ。
では、こうしたバッシングを生徒はどう受け止めているのか。自由の森学園の卒業生に話を聞いてみると、あっけらかんとした返事が返ってきた。