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安倍首相が「子どもの貧困」対策イベントで“他人事”メッセージ! 子どもや地域に努力を要求し国は知らんぷり

 だいたい、子どもの貧困対策として安倍首相が打ち出したこの「子どもの未来応援国民運動」の目玉は、民間から募金を集めてそれをNPOなどに助成するという完全に他力本願の施策だった。しかも、広報に約2億円超をつぎ込んだのに、募金開始から約5カ月で集まったのは、たったの2000万円。その後、なんとか7億円を集めたというが、繰り返すがこれは民間からの寄付で国は募金を呼びかけただけだ。

 さらに、安倍首相はこども食堂の取り組みをあたかも自分が発案したかのように自慢気に語っているが、こども食堂は民間からはじまったもので、国がやらないから地域の人びとが自発的にはじめた活動だ。本来ならば「勉強を助け、食事を出し、居場所を用意する」のは社会保障として政府がおこなうべきものなのだが、この国の総理大臣は「民間から集めた募金で、もっとがんばって」と丸投げするのである。ずうずうしいにも程があるだろう。

 そもそも、日本はいま、子どもの貧困が6人に1人という“貧困大国”状態にある。にもかかわらず、安倍首相に危機感はゼロ。実際、今年1月の国会でも「日本は貧困かといえば、決してそんなことはない」「日本は世界の標準で見て、かなり裕福な国」などと現実から乖離した発言をおこなった。2014年に閣議決定した「子どもの貧困対策大綱」にしても数値目標を明示せず、今年4月に厚労省が子どもの貧困対策費として計上したのはたったの33億円だ。

 こうした安倍首相の対応は、子どもの貧困や拡大する経済格差を政治的に解決すべきものと考えず、「自助努力の問題」と考えているからこそのものだ。そうでなければ、民間で募金を募るなどという対岸の火事のような対策を平気で打ち出せるわけがない。

 しかし、子どもの貧困は「自己責任」の問題などではない。事実、日本財団が昨年発表した試算では、このまま子どもの貧困が放置された場合、将来の所得の減少額は42兆9000億円、財政収入の減少額は15兆9000億円にものぼる。子どもの貧困は、いままさに経済問題として即急な対応が求められているのである。

 他方、日本と同じように子どもの貧困が問題化したイギリスでは、ブレア元首相が子どもの貧困対策を国家の成長戦略として捉え、99年に「シュアスタート」(確かなスタート)と銘打った大規模な支援策を展開。その結果、1997年に26%だった子どもの貧困率は2010年には18%まで下げることに成功している。

 このままでは問題はますます深刻化し、社会的損失は莫大なものになっていく。一刻も早く国が然るべき予算を組んで対策に乗り出さなくてはならないが、しかし肝心の安倍首相は、民間に責務を担わせるという無関心さで、〈あなたの未来を決めるのはあなた自身です〉などと子どもたちにまで「自己責任」をささやくのだ。

 血も涙もない、安倍首相の空疎な子どもたちへのメッセージ。世界中がトランプショックに包まれて「悪夢のよう」と言うが、はっきり言ってこの国はすでに悪夢が具現化しているのである。
(水井多賀子)

最終更新:2016.11.12 11:10

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