実際、トランプは北朝鮮や中国に対する外交は融和路線をとると見られているが、他方、イスラム教に対する差別言動、排外主義は隠そうとしない。その反発から米国内でテロが起き、そして、トランプがこれに対する報復戦争を始めるとの予測もある。また、トランプの対中東政策は先行き不透明としか言いようがなく、たとえばイスラム国(IS)に対する軍事的手段を強め、全面戦争に発展する可能性も決して低くない。
こうした事態が勃発したとき、安倍政権は嬉々として集団的自衛権を行使し、戦争に参加するだろう。
そもそも、永田町関係者の間では、安倍首相とトランプはかなり相性がいいのではないか、という観測も流れている。
「トランプの当選で官邸はかなり動揺していますが、一方で『安倍さんはトランプと気が合うのではないか?』とも囁かれている。まあ、オバマをあれだけ毛嫌いし、逆にロシアのプーチンとは仲睦まじいのを見てもわかるように、安倍首相はトランプのようなタイプは嫌いではないでしょう。反知性主義同士というか(笑)。大統領就任からしばらくすればトランプも対日政策の軟化を示し、むしろ安倍首相と意気投合するんじゃないか。そんな見方がこぼれてくる」(全国紙官邸担当記者)
中東で戦争をはじめトランプが「シンゾウ、オレと一緒に戦ってくれ」と声をかけ、「もちろんだ、ドナルド」と安倍首相が返す。そんなシーンだってありうるのだ。
いや、それだけではない。トランプによって人権無視、差別主義丸出しの政治が世界的な潮流になり、それによって正当化された安倍政権の反人権的な政治姿勢はさらに、エスカレートしていくだろう。
そして、最悪なのが、安倍首相がトランプのアメリカに従属しながら、お得意の二枚舌で、国内では“トランプ恐怖”を利用し一気に9条改憲にもっていく、という筋書きだ。すでに永田町ではトランプ当選をうけて、年明けから4月頃にかけて安倍内閣が「憲法改正」を掲げて解散に踏み切るのではないかとの観測も流れ始めた。トランプによる安全保障の不安を煽りながら「自己防衛」の必要性を打ち出し、憲法9条を争点にする可能性があるというのだ。
そして言うまでもなく、安倍が9条という歯止めをなくしてしまえば、トランプ政権下で懸念されるアメリカの対テロ戦争や中東戦争に、日本国民がさらに巻き込まれやすくなるのは必至だ。
こうした“最悪のシナリオ”を回避するためにも、私たちは“トランプ恐怖”の本質を見極め、これを利用しようとする安倍政権の動きを注意深く見ていかなくてはならない。真の“恐怖”は、アメリカではなく、永田町に居座っているのである。
(エンジョウトオル)
最終更新:2016.11.10 09:44