人間をその言論や行動ではなく「血」でしか見ないというグロテスクさ、ここに極まれりといった感じだが、彼らの根底には日本国憲法を尊重する今上天皇への反感がある。
実際、2014年には、八木氏は「正論」で「憲法巡る両陛下のご発言公表への違和感」なる文章を発表し、そこでモロに今上天皇と皇后を批判していた。前年に天皇と皇后が日本国憲法を高く評価したことに対して、八木氏は苛立ちを隠さずこう記したのだ。
〈両陛下のご発言が、安倍内閣が進めようとしている憲法改正への懸念の表明のように国民に受け止められかねない。〉
〈宮内庁のマネジメントはどうなっているのか。〉
さらに続けて、〈仄聞するところによれば、両陛下は安倍内閣や自民党の憲法に関する見解を誤解されているという〉なる信ぴょう性皆無の流言飛語を拡散しにかかるなど、明らかに安倍政権の意を受けて天皇批判を展開してきた。
いずれにしても、天皇主義者を自称する彼ら極右言論人の本音は、天皇を隔離して戦前ばりに“神格化”を成し遂げ、同時に安倍政権による改憲の邪魔を絶対にさせないということなのだ。
振り返れば、戦前日本は「万世一系」の天皇を頂点とした「国家神道」を支配イデオロギー化し、「万邦無比」の「国体」思想を国民に意識づけることで、侵略戦争を正当化した。八木氏らがいう「国体護持」は、そうした事実に立脚している。そういえば、八木氏は前述「正論」10月号で、天皇の「務め」には「存在」と「機能」の2つがあるとして、こう強調していた。
〈陛下はそのうち、専ら天皇としての「機能」を重視されている。しかしだからといって私たちが、天皇たる者、その「仕事」を全身全霊で果たさなければならない、それができて初めて「天皇」たり得ると考えるのは早計である。
陛下がビデオメッセージで触れられた「務め」とは天皇としての「機能」の面だが、その大前提には「存在」されること自体の意義がある。徹底した血統原理によって他に代わる者がいない存在として、陛下が天皇の地位に就いておられること自体に尊い意義がある。〉
ここからも、再び天皇を人間から神話的存在としてまつりあげ、政治利用しようという意図があることは明らかだろう。連中がやろうとしているのは、天皇機関説を排撃し、立憲政治を骨抜きにした国体明徴運動の“現代版”なのだ。