4月29日は昭和天皇の誕生日であり、1988年までは「天皇誕生日」だった。それが、昭和天皇の崩御によっていったんは「みどりの日」となった。「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心を育む」というのがその趣旨だが、そこには生物学者であり自然をこよなく愛した昭和天皇を偲ぶ意味も込められていた。ところが、極右勢力にとっては、それが気に入らなかった。そこで、神道政治連盟などが中心となって運動が起こり、「みどりの日」を「国民の休日」だった5月4日に無理やり移動させ、4月29日の「昭和の日」を押し込んだのだ。この時とほぼ同じ人たちが、「明治の日」実現のために集まっている。
前述の集会では、推進協議会事務局長の相澤宏明氏が、時事通信の取材に対して「本来のあるべき姿に戻したいとの素朴な思いがあるだけ」と話しているが、彼らにとって「明治の日」は「昭和の日」の時の積み残しであり、「紀元節」「新嘗祭」復活への試金石なのである(ちなみに相澤事務局長は右派系出版社「展転社」の会長で、同社は2005年に『「昭和の日」実現への道』を出版している)。同協議会のHPを見ると、第2次安倍政権発足後に、にわかに活動が活発化していることがよくわかる。
推進協議会の活動目標は、祝日法を改定して11月3日の「文化の日」を「明治の日」にすることだ。同協議会が出した請願書によると「日本国が近代化するにあたり、わが民族が示した力強い歩みを後世に伝え、明治天皇と一体となり国つくりを進めた、明治の時代を追憶するための祝日」にしたいという。明治維新から150年目の節目にあたる2018年の実現が目標で、安倍首相に近い自民党議員らを中心に超党派での国会議員連盟発足の動きもすでに始まっている。
さらに、この運動に呼応するかのように 、政権側も2018年に明治維新150年の記念事業を実施することを10月7日に発表した。菅官房長官は記者会見で「明治150年は、我が国にとって一つの大きな節目。明治の精神に学ぶ、日本の強みを再認識することは極めて重要だ」と述べている。これに合わせて、現行憲法の交付日にちなんで設けられた「文化の日」を廃し、戦前の国家神道を意識した「明治の日」に変えようという魂胆なのだ。
しかし、ここであらためて指摘しておくが、こんなものは日本の伝統でもなんでもない。むしろ、薩長革命政府によって作られたフィクションにすぎない。