こいつらは神武天皇が実在したと、本気で考えているんだろうか、読むだに頭がクラクラしてくるではないか。だが、これまで漠然と保守化、右傾化などと呼ばれていた安倍政権の目指す国家像が、これらの言葉ではっきりしてくる。それは、戦後日本を否定して、明治憲法下の日本へ戻すということなのだ。このことは、実は休日と密接に関係している。戦前の休日には、祝日と祭日があり、祭日は天皇の宮中祭祀や国家神道と関連づけられていた。ざっとあげると、以下の通りだ。
・元旦(1月1日)=四方節、1年の最初に行われる宮中祭祀
・建国記念(2月11日)=紀元節、神武天皇が即位した日
・春分の日=春季皇霊祭、歴代の天皇、皇后、皇親の霊を祭る儀式
・昭和の日(4月29日)=天長節、昭和天皇の誕生日
・秋分の日=秋季皇霊祭、歴代の天皇、皇后、皇親の霊を祭る儀式
・文化の日(11月3日)=明治節、明治天皇の誕生日
・勤労感謝の日(11月23日)= 新嘗祭、天皇が五穀の新穀を天神地祇に進め、自らも食す儀式
明治憲法と日本国憲法の最大の違いは言うまでもなく主権者が誰かということだ。明治憲法下では天皇が主権者だった。だから、「神聖にして侵すべからず」存在である天皇に関することが祭日になっていた。戦後、天皇は人間宣言をして、日本は新憲法のもと国民主権の国家になった。それに伴い休日も天皇中心の祭日から、「国民こぞって祝い、感謝し、記念する」国民の祝日へと変わった。これを旧に戻すということは、国民主権の否定にほかならない。
これこそが、実は安倍首相とその周辺にいる極右勢力の本音なのだ。
2013年4月の衆院予算委員会で「明治の日」について質問し、菅義偉官房長官から「明治の日の必要性についての意見があることは受け止める」との答弁を引き出した前衆院議員の田沼隆志氏(当時日本維新の会、現自民党)は、自らのブログに〈私のライフワークである、祝日正常化。その中でも第一は、文化の日を明治の日にすることです〉と書いている。明治憲法下の祭日の復活は、この人たちにとっては「正常化」ということのようだ。
その活動の中心になっているのは「明治の日推進協議会」という団体だ。かつて「昭和の日」(4月29日)実現運動を推進したメンバーを中心に2011年に結成された。役員にはジャーナリストの櫻井よしこ氏や、安倍首相のブレーンの一人とされる伊藤哲夫氏(日本政策研究センター代表)のほか、代表委員に百地章氏(日本大学法学部教授)、所功氏(京都産業大学法学部教授)といったお約束の日本会議系学者も名を連ねており、日本会議の別働隊といってもいいだろう。