だが、実際に人選に入ると、皇室問題や歴史学の専門家からは、ことごとく依頼を拒否されたという。
「保守系の人からもことごとく逃げられてしまったようです。そりゃそうでしょう。歴史的に見ても生前退位はあり得る制度。それを天皇の希望を無下にするようなかたちで、否定できる専門家はそうそういない。まあ、日本会議系の極右の学者なら引き受けたでしょうが、そんな連中を人選したら、今度は世論の反発を招くのは必至。そういう意味では、なんの定見ももたず、政権の希望通りの結論を導いてくれる宮崎さんのような人材はうってつけだったんですよ。女性の意見も聞いたというアリバイづくりにもなりますしね」(ベテラン皇室記者)
とんだ茶番な人選というわけだが、しかし、これは宮崎氏だけではない。他のメンバーを見ても、皇室問題の専門家はまったくおらず、安倍政権の意に沿う発言しかしないような顔ぶれで固められている。
たとえば、座長の今井敬・経団連名誉会長は首相の側近中の側近と言われる今井尚哉政務秘書官の叔父で、安倍首相とも頻繁に会食を重ねている。また、御厨貴東京大学名誉教授は論壇誌に頻繁に登場する保守派論客で、第一次安倍政権での「防衛省改革に関する有識者会議」のメンバー。清家篤慶應義塾長も同じく保守派で、第二次安倍内閣の「社会保障制度改革推進会議」の議長を務めている。イスラムを専門とする歴史学者の山内昌之東大名誉教授は、教育再生実行会議(委員)や国家安全保障局顧問会議(座長)、そして昨年の戦後70年談話有識者会議など、安倍政権による有識者会議の常連メンバーである。
おそらく、この生前退位有識者会議では、議論は形式的なものにとどまり、最終的には官邸のコントロールで、一代限りの特措法へと進むだろう。
改めて指摘しておくが、世論調査では、圧倒的多数の国民が恒久的な退位の制度を求めているという結果が出ている。国民の意思を無視し、なんの専門的知見ももっていない、ましてや経歴詐称疑惑を指摘されるような“御用達有識者”を使ってまで、安倍政権はいったい何を守ろうとしているのか。
少なくとも、それは“皇室の伝統”などとはまったく関係のないグロテスクなシロモノであることは確実だろう。
(編集部)
最終更新:2017.11.24 07:13