宮内庁「象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば」より
天皇の「生前退位」を巡り、安倍政権は今上天皇の一代に限って認める特措法を制定する方向だという。世論調査では恒久的な退位を可能にする法整備を求める声が圧倒的多数にもかかわらず、そこに踏み込まないのは、“現人神としての天皇”にこだわり生前退位に否定的な日本会議などの保守勢力への配慮があるのはあきらかだ。
そんななか、安倍政権や右派勢力の意向を代弁するように、保守メディアが一斉に「生前退位」論議や「皇室典範改正」に異を唱える特集を掲載している。
「『生前退位』とは何事か」「摂政を置いて万世一系を」(「WiLL」9月号/ワック)、「皇室典範改正の必要はない」(「正論」9月号/産経新聞社)……。
さらには、天皇の「お気持ち」表明自体を攻撃するメディアまで出てきた。たとえば、露骨だったのが先週発売の「週刊新潮」(新潮社)9月15日号だ。同誌は「巷は賞賛一色でも専門家たちの違和感 天皇陛下『お言葉』は『違憲か暴走』と断じる皇室記者の失望」なるタイトルの特集を掲載。複数の皇室記担当記者たちのコメントというかたちをとって、天皇を徹底糾弾しているのだ。
「あのような『お言葉』を陛下が発せられたことに、失望を禁じ得ませんでした」(以下「週刊新潮」より、大手紙皇室担当記者)
「端的に言ってしまえば禁じ手、『やってはいけないことをなさってしまった』ということ」(同)
「さらに驚いたのは、メッセージの中で、皇室典範に定められた摂政の適用について明確に否定的なお立場を示されたことです。(中略)もはや“国政に関する権能を有しない”と定めた憲法を踏み越えているのは明らかです」(社会部皇室担当デスク)
「今回の(NHKの)スクープの最大の“情報源”は、いわば陛下です。(中略)侍従たちに筋書きを作らせ、事前にメディアにリークして世論の反応を探り、その上で報じた通りのご発言をなさるというのは、多分に政治的だと言わざるを得ません」(同、ベテラン記者)
ようするに、今回の「生前退位」の流れは天皇が主体的に企てた政治関与に他ならず、憲法4条違反であると糾弾したうえ、第一報をうったNHKにリークしたのが、天皇自身であると名指ししているのだ。
しかも、「週刊新潮」は天皇が常々、護憲の姿勢を見せていることにもかみついている。2013年、天皇が80歳の誕生日に際した記者会見で「戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きました」と護憲の意思を明確にしたことを蒸し返して、社会部皇室担当デスクによるコメントのかたちでこう批判する。