たとえば、15年3月、朝日新聞が世帯年収別の支持政党調査を行い、10年前の05年12月の数値と比較している。それによると、小泉政権下の05年の調べでは、年収1000万円以上の自民党支持率が43% 年収750万円〜1000万円が同37%、年収300万円未満の層が40%と、年収で支持率はほとんど変わらなかった。ところが、15年の調査では、年収1000万円以上で同46%、年収750万円〜1000万円で同48%、年収300万円未満の層では36%と、明らかに年収の高い層の自民党支持率が増加し、年収の低い層の支持率が減っているのだ。
朝日新聞では、この傾向について、日本でも経済的格差に不満を持つ層が政権与党にNOを突き付け始めているのではないかと分析をしている。
しかし、だとしたら今回のワリキリ調査で、支持政党のある貧困層は全員が自民党支持だったという結果はいったい何を意味しているのだろうか。サンプル数も多くないので、断定的なことはいえないが、売春せざるをえないところまで追い詰められている最貧困層や、生活に困窮しても行政に頼れないような層はやはり自民党に取り込まれてしまっているということなのか。
そう考えると、これは自民党やマスコミの問題であると同時に、野党の問題でもある。たしかに安倍政権がナショナリズムを煽り、マスコミがそれに協力することで、貧困層の目を不平等からそらしているという側面はある。しかし、一方で民進党はもちろん共産党も生活の党も本当の経済的困窮者を取り込めていない。だからこそ、こういう調査結果が出てきてしまうのだ。
実際、ワリキリ調査の極端な数値は別にして、朝日新聞の調査でも年収300万円未満の層でまだ36%という自民党支持率があるのだ。
格差を助長する政策を前面に出している政党にその犠牲者である貧困層までが取り込まれている──。野党は、この現実を真摯に受け止め、上から目線ではない、本当に貧困層に届くようなわかりやすいメッセージを出す必要がある。
(田中 教)
最終更新:2016.05.28 07:28