ところが、こうした異常事態にもかかわらず、イオンは金融庁に報告すらせずに、手作業でデータを修正、原因の究明や再発防止に向けた抜本的な改修を行っていなかったというのだ。イオンCSは社内隠蔽ため、データ修正が正確だったかも不明のまま、肝心の利息計算のシステムも「日割り計算ができない」という“欠陥品”を使い続けた。その結果、昨年4月に露見した「大量の過剰請求」を引き起こしたと見られるのだ。
こうしたイオン側の隠蔽に次ぐ隠蔽で消費者が割を食ったわけだが、問題はまだある。イオンは昨年、金融庁からの指示で特別チームを設置したが、その調査範囲はシステム障害の起こった請求分のうち、10年間の05年8月分から。そして、上述した返金対応の社内マニュアルには、なぜ10年前からしか調査しないのかとの質問に対し、こんな想定問答が指示されていたというのだ。
「大変申し訳ありませんが、法律により時効期間が十年となっております」
ようするに、欠陥システムの存在やその後の隠蔽を棚上げし、時効を狙ってトンズラしようというのだ。同記事によれば、その上「追跡不可能」として闇に葬りさられた事案が約1000件にのぼるという疑惑も浮上、さらなる誤請求事案が隠れている可能性があるという。
クレジットカードはその名のとおり“信用”に基づく事業だ。イオングループのトラブルの隠蔽は顧客や社会に対する背信行為であり、クレジット業界全体を揺るがしかねない重大かつ深刻な不祥事である。
だが、この「選択」の報道をテレビや新聞などの大マスコミは一切無視したままだ。しかも「選択」の記事が出た後、イオンCSの親会社であるイオンフィナンシャルサービスの社長が辞任したにもかかわらず、メディアはその人事をベタ記事で報じただけで、背景の不祥事には一切踏み込むことはなかった。
なぜか。それは前述したように、イオンが大マスコミにとってセブン−イレブン同様、巨大スポンサーであるからだ。特に新聞にとってはスポンサーに加えて“チラシ”の存在もある。
「新聞の折り込みチラシってありますよね。イオンは店舗のある全国津々浦々、毎週のように多くの折り込みチラシを出していますが、新聞社にとって、これが大きな収入源となっているのです」(新聞販売に詳しい関係者)
また、イオンはこうした“広告漬け”によるメディア支配と同時に、批判記事に対して強硬な対応をすることでも知られている。その典型例が「週刊文春」(文藝春秋)13年10月17日号が報じた「産地偽装」問題だ。「全商品の8割が中国産」と見出しをうち、イオンで販売された弁当などに国産と称した中国米が混入していたことや、ずさんな検査体制などを告発した記事だったが、これに対しイオンは謝罪と雑誌回収を要求。これを拒否されると、1億6500万円の損害賠償等を求める訴訟を起こした。それだけでなく全国のイオンやグループ傘下のコンビニに「週刊文春」を撤去するよう指示したのだ。